平成21年度HOYA株式会社の株主総会における提案内容について、以下関連資料を転載します。
平成21年4月14日
拝啓 HOYA株式会社代表取締役 鈴木洋殿
会社法305条の株主提案権に基づいて、以下の議題(平成21年3月25日付けですでにIR・広報部責任者伊藤直司氏宛てに書留にて送付しているものと同一の株主提案)を、株主総会の目的である事項につき、当該株主である私が提出しようとする議案の要領として、株主に通知することを請求します。
敬具
山中裕
拝啓 HOYA株式会社代表取締役 鈴木洋殿
会社法305条の株主提案権に基づいて、以下の議題(平成21年3月25日付けですでにIR・広報部責任者伊藤直司氏宛てに書留にて送付しているものと同一の株主提案)を、株主総会の目的である事項につき、当該株主である私が提出しようとする議案の要領として、株主に通知することを請求します。
敬具
山中裕
株主提案
第1号議案 丹治宏彰取締役を解任し、材料科学と眼科の領域でそれぞれ別に役員2名を専任し、各分野での新規事業の創出や買収での企業価値の創出を担当させる件
〇 議案内容
丹治宏彰取締役を解任し、変わって材料科学と眼科の領域のそれぞれで、新規事業の創出や買収での企業価値の創出に実績のある人物2名を専任し、各分野での技術担当者の執行役員としてそれぞれ登用をする。
○ 提案の理由
HOYAの経営陣は、従来より「株主価値の最大化」「新規事業は重要」などと株主向けに言っているにもかかわらず、2000年(平成12年)以降の過去9年間にわたって株主に高いリターンを与えることに完全に失敗しており、また経済合理的な形での新規事業の創出になんら実績がなく、ペンタックス社の買収案件を高値掴みして大損失を出すなど、株主利益の観点から見て、極めて問題があることには、もはやなんらの疑いがない。このような現状を放置するのであれば、指名委員会の構成メンバーの社外取締役らによる、取締役会の本来の役割を忘れた仲良しクラブ化であり、社外取締役形態導入の先駆的な企業として、他の日本企業、しいては日本経済にあたえるネガティブな影響は計り知れない。
HOYAの経営陣は、従来より「株主価値の最大化」「新規事業は重要」などと株主向けに言っているにもかかわらず、2000年(平成12年)以降の過去9年間にわたって株主に高いリターンを与えることに完全に失敗しており、また経済合理的な形での新規事業の創出になんら実績がなく、ペンタックス社の買収案件を高値掴みして大損失を出すなど、株主利益の観点から見て、極めて問題があることには、もはやなんらの疑いがない。このような現状を放置するのであれば、指名委員会の構成メンバーの社外取締役らによる、取締役会の本来の役割を忘れた仲良しクラブ化であり、社外取締役形態導入の先駆的な企業として、他の日本企業、しいては日本経済にあたえるネガティブな影響は計り知れない。
現に多くの日本企業の取締役会では、経営陣の扱いやすい社外取締役を数人専任すれば、保身として良しという、株主利益とはおおよそかけ離れた結果になってしまっている、悲しい現実がある。なお株主利益の代表者であり、経営監視を行う義務を負った上場企業の取締役を、天下り官僚のポストにするべきではない。HOYA株式会社の株価が投資家に高いリターンを与えたのは、あくまで1990年代までであり、2000年(平成12年)以降に投資を行った投資家には、特に並外れたリターンを与えていないばかりか、株価の動向を見ると、日経平均すら下回っている。株価は低迷しているのである。
企業価値と株価をあげるための有力な方法は、新規事業の創出は不可欠な構成要素である。当たり前のことではあるが、常に最適な人材をその任に当たらせるのが、株主から与えられた取締役の義務であり、そうでなければ取締役の善管注意義務違反である。そういった観点から判断すると、丹治宏彰取締役を最高技術責任者にしておくことは、株主利益に反している。丹治宏彰氏は、過去9年間、そして2000年(平成12年)以前にも、なんら新規事業創出において実績がなく、また以下に述べる客観的な情報や実績から判断して、株主価値を増大させる新規事業の能力を所有していない。従って、CTO(最高技術責任者)として不適格であるからして、解任が適当だと考えられるので、提案者はこの議案を提案するにいたった。以下に、その理由を述べこととする。
第一に、丹治宏彰氏にはまともな事業開発の実績が、過去の本人の人生でまったくない(皆無である)ことがあげられる。数年前の時点で、主力事業の将来性が数年後に悪化することが明らかで、主力のガラス磁気ディスク事業には、フラッシュ・メモリーという代替品が存在し、新事業の必要性が非常に高い会社において、事業開発の実績がない人物が最高技術責任者となっていることは、株主価値の観点から見て、そもそも5年以上前から不適切であったのである。現在のHOYAの主力事業は、すべて80年代後半までに開発されたものであり、90年代以降は新規事業の開発に経済合理的な形では、成功していない(高値掴みした買収案件で、事業が増えたことはのぞく)。ガラス磁気ディスクメモリー基盤、フォトマスク、マスクブランクス、眼内レンズ、めがねレンズ、コンタクトレンズの小売りの事業のいずれもが、80年代後半までに創出された事業ばかりであり、丹治宏彰氏はこれらの開発には関与していない。株価がなんら上がらないのは、90年代以降に新規事業をまったく創出できなかったことの、大きなツケであり、それでいて役員は涼しい顔で巨額の報酬を受け取り、そのツケは結局のところ個人投資家を含む株主が負っている。
第二に、ベンチャー投資に悲惨な成果を、実績として残していることである。例えば公開情報だけを元にすると、2008年(平成20年)に投資対象であるXponent Photnics社や、Qstream Networks社の実質的な破産が会社から公表されているが、これがHOYA株式会社のベンチャー投資の実態である。2004年(平成16年)に買収したと発表されている、Radiant Images社という会社についても、ほぼ同様である。これらは丹治氏が大きく関与して行われた経営行動である。例えば、2006年(平成18年)にXponent Photnics社への投資と代理店契約締結時に、「「GE-PON」用光トランシーバの初年度の売上を6億円と見込んでおります」と発表しているが、何ら成果は上がっていない。これらは株主に損害を与えた投資活動の公開されているほんの一部である。
第三に、社内のR&D(研究開発)には、ここ9年間に見るべき実績がなんらないことがあげられる。当たり前のことであるが、HOYAは昨年度まで経常利益で約1000億円の利益を出しているわけで、成長率を底上げするためには、少なくとも100億円以上の利益を上げられる事業を、経済合理的な形で創出する必要がある。ところが株主向け資料に記載されているプロジェクトの中に、一つでも5年から7年以内に100億円以上の営業利益が創出されるようなものが含まれているであろうか。答えは否である。例えば2002年(平成14年)5月発表の、SiC其板の開発、製造子会社のHAST (HOYA Advanced Semiconductor Technology)という会社でも、2007年(平成19年)での上場を目指すなどと公表され、「設備投資金額は2004年度までに合計で26億円。設備投資の内訳は以下の通り。2002年度が工場の基礎工事費、装置などに7億2000万円。2003年度は結晶成長装置の増設、デバイスの試作装置などに7億6000万円。2004年度は量産設備に11億3000万円。設立5年後には、売上高40億円と株式上場を計画している」とあるが、7年たっても何の成果もないことは、利益に貢献するような事業の創出が行われていないことから明らかである。
第四に、ペンタックス社の買収により企業価値が毀損された点についての責任問題についてである。2006年(平成14年)12月の買収時においてでさえ、カメラの市場においてヒット商品が出ていたために一時的に黒字になっていただけであり、カメラ商品のサイクルが2年程度であることなど、事業の基礎的な条件だけをみれば、優良な買収対象だと言えない会社を、考えられないような高値つかみをし、経営陣は株主価値に重大な毀損を与えたことの責任の一端をとるべきである。現に2年もたたないうちに、買収対象の事業は、ほぼ不良債権化している。「2011年3月にのれん代を除く営業利益率を18%にすることを目指す」などと、2年ほど前に鈴木洋最高経営責任者は言っていたが、これが実現する可能性は皆無であり、現在の状況は赤字転落である。1500億円があれば、現在の何パーセントの自社株を消却できるであろうか。投資銀行やプライベート・エクイティーの業界の実務では、「高値掴みだけは一番やってはいけない」と一番、最初に習うものであり、投資銀行のアナリスト・レベルでも、この程度の判断は出来るはず、経営陣の能力は、その水準の認識力もないことを疑わざるを得ないことを意味している。無論、執行役をかねた取締役の責任は、株主に対してあるのであり、あまたの日本の企業がそうであるように、最高執行役のイエスマンでいればいいというわけではなく、なぜ買収過程の選別において、意義を唱えなかったのか、唱えなかっただけでも取締役失格である。だいたいペンタックス買収騒動で露呈した、あの当たり前のことに関する実務能力のなさは、一体何なのであろうか。
以上のような理由であるので、経営陣は、このような株主資本の無駄使いを続けており、特に技術経営が有効に行われた形跡が見られず、丹治宏彰氏が社内の事業開発や企業買収等による企業価値の増加という点において、不適格であることは明らかであるので、CTOの任務に当たる人物には、丹治宏彰氏に変えて、材料科学と眼科の領域のそれぞれで、新規事業の創出や買収での企業価値の創出に実績のある人物2名の登用をするべきである。そもそも材料科学と眼科は専門性という意味で、大きく異なる分野であり、同一の人物で対応できるとは思えない。株主価値のまっとうな増加という観点から、CTOには新規事業開拓に実績のある人物の登用をするべきであることは、もはや疑いがない。取締役会は、株主価値の最大化を口にするのであれば、COO(最高執行責任者)を任命したくらいで、お茶を濁すべきではない。それではまるで、8年間失政を続けてきたブッシュ政権が、副大統領だけ民主党の政治家にして、すいませんがこれで今までと同じように私達は多額の報酬をもらいますのでご勘弁を、と言っているのと同じである。また現在の経営陣は、ペンタックス買収騒動で露呈したように、投資銀行の使い方など、基本的な経営実務能力に関する知識が、十分に理解できていないと考えられる。
派遣社員が数百万円の年収で生活し、老後の生活の糧にと投資を行った個人投資家が多大なキャピタルロスを被っている中で、億単位の報酬をこのようななんら実績のない人物に与えるべきではない。同じく月一回の出勤で派遣社員の何倍もの報酬を得ている社外取締役諸氏は、猛烈に反省するべきである。また当然のことながら、取締役の任期は1年であり、毎年株主総会で最も適切な人材を選出するべきものであり、今までの間、不適格な人物に技術経営に当たらせている任命者自体が反省するべき内容である。
今回の提案内容は、自らの経済合理性を超えて、社員や株主の皆さんのために「義憤に駆られて」というのが、正直な気持ちである。なお参考のために、提案者は、ペンタックスとの買収騒動のさなかの2007年(平成19年)5月ころに、「この買収は成功する見込みがなく、今すぐ停止するべきである」という手紙を送っていたが、社外取締役諸氏はいずれも、その助言には従わなかったことを、付け加えておく。