2011年5月31日火曜日

なぜ東京地裁民事8部で株主敗訴の判決が東京高裁で逆転勝訴になるのか

東京地裁の民事8部(通称商事部)ででた株主敗訴の判決が、東京高等裁判所(東京高裁)に控訴されると逆転で勝訴するケースが多々あります。山口三尊先生のレックスホールディングの事件が典型です。原弘産の日本ハウズイングの株主名簿閲覧請求事件もそうですし、同じく山口先生のサイバードもそうです。さすがにカネボウ事件だけは、あまりにひどいケースということで、一審の東京地裁民事8部でも株主勝訴です。確かに地裁レベルでは変な判決は結構ありますが、これだけ勝率に差があるのはなんか変?というのは明らかです。

先日和解した小生の株主提案に関する仮処分事件も、少なくとも債権者(株主側)の一部は認容する決定を出すつもりだったことは、担当の裁判官は口頭で小生に伝えています。あまりにひどいケースは、株主側請求でも認めていますね。なお東京地裁民事8部とほかの裁判所での商事事件でも、勝率が明らかに違うことは判例等を研究していると感じるところでもあります。小生の決議取消訴訟の裁判例と明らかに相反する「否決の決議の取消の利益はある」という判決文を書いたのは、山形地裁の裁判官です。

私の取消訴訟の判決などは、裁判所が明らかに説明義務に関する事実認定を曲げており、異常だといわざるを得ないと思いました。ただ裁判官たちも法律の訓練を伊藤塾などの司法試験予備校等で受けてきた人たちですので、事後的に検証されてぼろくそに言われると自分たちの立身出世にかかわりますから、さすがに「脅迫がない」とか、「適法な株主提案をとりあげなかったことが適法だ」というような意見は言っておらず、「取消事由ではない」といっただけです。この点は、はっきりと裁判での書面を示して、皆さんに判断していただきたいと思います。ただこの裁判は、形式的には原告敗訴ですが、実質的に勝訴です。鈴木洋氏は小生の質問を株主総会の議事録に掲載せずに、「原告は質問権を行使していない」などと述べたかと思うと、福井裁判長から総会当日の録画資料等の提出を求められると、質問したことにはするなど、支離滅裂ぶりを明らかにしています。会社側のめちゃくちゃな株主総会運営と主張を法廷の場で結果的に暴いていますが、最後に裁判官たちは「会社の総会運営方法がめちゃくちゃであっても、株主総会の決議の取り消し事由にはしない」と言っただけですからね。ぜひ訴訟記録を閲覧してみてください。個人的には、正論を貫こうとしていたにみえた福井章代裁判官から大門匡裁判官への変更には納得いきませんが。

それではなぜ東京地裁民事8部の判決が高裁で逆転する傾向にあるのでしょうか?(山口三尊先生はこのような背景を踏まえて、「民事8部は高裁の受付係」といっていました。)

①裁判官の天下りへのインセンティブです。民事8部の裁判官が、大手渉外事務所へのパートナー弁護士へ転身の下心を持つと、会社側に不利な判決を出すとそのような転身に悪影響を及ぼすと考えるみたいですね。法曹の天下りにはまだあまり注目が集まっていないので、これから若林亜紀さんに書いてもらいますので。

代表的なのはこの人(高山祟彦弁護士)ですが。裁判官だった人物が、次に物理的に同じ法廷(民事8部601号法廷)で弁護士として出てくることには、大いなる違和感を持たざるを得ないですが、いかがでしょうか?(以下山口三尊先生ブログより)
(ТМI総合法律事務所)高山祟彦弁護士:元東京地裁商事部の判事として、カネボウ営業譲渡差し止め事件で、株主敗訴の決定を書く。その後弁護士となりシャルレの代理人として、株主と敵対。

また法務省民事局付などというポジションがあり、私の相手方の泰田啓太弁護士(松尾・桃尾・難波法律事務所、当時は検事としてですが)や、山口三尊先生曰く「日本で最も株主の利益を侵害してきた」太田洋弁護士(西村あさひ法律事務所)などがかつて所属しています。この法務省民事局なるものは、法制審議会で御用学者を並べて法務官僚に都合のいい立法とするための局であり、特捜検察と並んで速攻おとり潰しにするべき不要な存在だと思います。政治主導の流れの中で、議員立法を強化する流れからいけば、議員立法をサポートする衆議院や参議院の法制局こそがエリートコースになるべきだと思うのですが。

議員が国民のために働かないのならば、自分で法案の素案を作って各議員の事務所を回るしかありません。今夜、知人と日本版ERISA法の立法をしようという話になりました。

②また日本の商法・会社法では、株主の権利が強く明確に規定されているという点があります。したがって、東京地裁民事8部の裁判官が解釈を捻じ曲げて会社側有利な判決を書いても、高裁の判事は株主の明文上規定された権利をそのまま適用して、逆転判決になることが多いのです。

③一つには裁判官の人事の問題があります。裁判官は任官すると地方の裁判所の判事をやらなければいけないなど、会社法や商法だけやっているわけではありませんし、一方で実務の世界はどんどん進んでいくので、裁判官がどんなに頭がよくて勉強をする気のある人でも、さすがについていけないということはあるのだと思います。裁判官は、日本の霞が関の官僚と同じように、特に専門性がないのですね。保全事件では裁判官と言葉を交わす頻度が高いのですが、(非公開の場ですが)その中で実務の感覚では変な発言を裁判官がすることは結構あります。

④あと③とも関連していますが、会社法と商法の経験が少ないために、民事8部の裁判官は企業法務を担当する大手弁護士事務所と勉強会などと称する交流会をやっています。そんなことが許されるのか、と言いたい。

しかし裁判所は、その権力の構造では、所詮は法律の解釈権を持っているにすぎないので、いくら東京地裁民事8部の裁判官が天下りの方向に目が向いていても、選挙で落とせる国会議員に国会で立法させてしまえば、すべてとは言えないにせよかなりの部分が解決します。やはり「資本市場改革関連法案」の立法活動しかないのでしょう。我々の年金を守るために、市民が立法をする仕組みを作りましょう。

2011年5月30日月曜日

株主提案関係で、取材したい方へ。

取材したい方は、どうぞメールください。
小生の取材申し込み用のメールアドレスは、yy2248[at]columbia.edu です。[at]を@に変えてください。

原則として、過去に失礼な対応をした以外の、すべての取材に答えます。

2011年5月26日木曜日

あるべく企業統治を破壊する中川知子氏(コーポレート企画室ジェネラル・マネージャー)

HOYA株式会社の企業統治の最大の問題点は、社外取締役が企業統治、株主価値の最大化の観点からまったく機能していないことです。日本が何でだめかについての、複合的な構造がそこに読み取れます。

というのも、社外取締役の情報のほとんどが、最高執行役傘下のコーポレート企画室(特に幹部社員の中川知子氏)の作成したものからのみ得られており、なんと昨年度の株主提案に対する反対理由のほとんどが、幹部社員の中川知子氏が作成したものを、浜田宏氏を含む取締役会の構成員が、何の批判もなく掲載したという問題があります。このことは、私の提起した決議取消訴訟の裁判資料からもはっきりと見ることもできます。そもそも適法な株主提案の議題を一方的に落とすことは違法であり、その違法行為を隠蔽するために、さらに違法行為を繰り返すというありさまであり、中川知子氏は鈴木洋氏と共謀して、違法行為を連発していると言えます。

そもそも例の無機EL(ナノ粒子)の研究中止について、監査委員会へ萩原太郎氏と塙義一氏、椎名武雄氏への賠償請求の書面を会社(というか監査委員会事務局)に送付しましたが、これらはすべて中川知子氏の検閲もどきがかかっており、監査委員会委員の取締役へ行く前に、中川氏らが中身を精査するわけですね。このことは、先日の仮処分の審尋の時に、相手方の泰田啓太弁護士(検事出身)がその事実をコメントしていたことからも明らかです。

取締役会反対意見として書かれている「秘密投票で議決権行使は変わらないと考えている」とかは、機関投資家の担当者であれば、当該議案に賛成するかどうかは別として、この取締役会はいったいどうなっているのではないかと思ったと思います。実は形式的に解任権限等を持つ取締役よりも、中川知子氏が主導し、実質的に力を持っていることが大問題なのです。このような仕組みの下では、中川知子氏と鈴木洋氏が不正行為を連発していても、なんら社外取締役がチェックする機能は果たされないわけで、内部統制システムの構築義務にも関連してきます。

結局高橋洋一氏の本とか読んでいても思うんですけれど、情報をコントロールしている人間が権利的には権限がなくても、実質大きな権限を行使しているということがあるんですね。それは内閣であっても、会社であっても変わらないと。大臣に人事権があっても、それを行使するのを妨害しようとしてくるのと似ています。実質的には社外取締役が大きな権限をいても、中川知子氏が決裁している書類しか取締役会や3委員会に行かないのであるから、当然誰が実質的な権限を持っているかという構造になるわけです。だからこそ、中川氏の権限外しになる議案「執行役を交えない経営会議」(ただそのアジェンダを中川氏が決めていればそれも骨抜きに)とか「取締役会だけの執行役が雇用するのとは別の法律顧問の雇用予算」とかの議案を不掲載にするでたらめな法解釈に基づく総会運営をやってこようとしてくるんですね。

というか、そもそも相手方の松尾・桃尾・難波弁護士事務所なども執行役側(というより鈴木洋氏と中川知子氏)のほぼいいなりなんだから、いままでの経緯はいずれこのサイトなどで公開していきますね。あと法的に正当化できる理屈と、株主利益の観点から望ましい理屈は、ずれてくることもあるんですね。

そして以上のような状況なのに、「PIが業界水準より高い」などと言って、取締役選任議案に賛成推奨する議決権行使会社にも大きな問題があると思います。以前ビデオニュースのなかで、宮台真司氏が「なぜ関西電力の経済合理性に反する原発建設計画に、株主が株主代表訴訟などのアクションを取らないのか?」という質問に、飯田哲也氏は「保険会社等には事業を分析する能力がなく、アメリカの議決権行使会社の推奨に従っているだけだ。議決権行使助言会社は、独占企業だから収益的には現状のままでOKとする。」と答えていました。議決権行使助言会社は、会社の分析をする能力や資源が十分にないことを認めたうえで、議決権行使の推奨レポートを発行するべきではないでしょうか?

同世代の方から、数多くの応援メッセージと助言をいただけていることに感謝を申し上げます。
外国人投資家の議決権行使行動と議決権行使助言会社の問題点については、別に記載します。

2011年5月21日土曜日

萩原太郎氏(技術担当執行役)へ提訴請求

2008年7月24日に発表されている「全無機量子ドット・エレクトロルミネッセンス素子研究グループがJJAP論文賞を受賞」の研究成果でもある無機ELに関する研究開発を、2010年春ごろに突如中止していたことが判明しました。この研究グループは、大阪大学の松尾先生の研究室と、科学技術振興機構(略称JST)とのあいだで共同研究していたものであり、非常に高い評価を得ていたのに、突如としてその研究成果である機械等を寄贈してしまうなどの前代未聞の行為を行っています。小生が去年の株主総会で主張したように、萩原太郎氏は早急に退任するべきです。

なお当社においては、執行役候補の取締役会への上程権限が指名委員会にあることから、特に責任のある指名委員長椎名武雄氏と、塙義一氏についても、提訴対象としました。

株主代表訴訟に係る提訴請求書

〒161-8525
東京都新宿区中落合2丁目7番5号
H O Y A 株式会社 監査委員会 御中
H O Y A 株式会社 監査委員会委員長 児玉幸治様
H O Y A 株式会社 監査委員会委員 椎名武雄様
H O Y A 株式会社 監査委員会委員 茂木友三郎様
H O Y A 株式会社 監査委員会委員 小枝至様
H O Y A 株式会社 監査委員会委員 河野栄子様

平成23年5月16日
H O Y A 株式会社 株主 山中 裕

前略 私こと山中裕は、六ヶ月前より引き続き貴社株式を保有する株主である(会社法八百四十七条一項参照)。

 貴社は、2008年度のアニュアルレポートにて、研究開発活動の一つとして、「ナノ粒子」の項目を設け、「ナノ粒子とは、粒径が数ナノメートルの超微小な粒子のことです。金属やセラミクスなどの材料をナノサイズまで小さくすると、その材料の性質が変化し、発光など新しい機能がうまれたりします。HOYAは、さまざまなナノ粒子の分散・表面改質技術の研究に取り組んでおり、これらをうまく組み合わせることで新しい物性をもった複合材料の開発に挑戦しています。今季は高屈折率工学部品や磁気媒体関連分野での応用を目指します」(27ページ)と記載するなど、3年前の時点でも目玉プロジェクトの一つとして宣伝していた無機ELに係る研究開発プロジェクトを、2010年春ごろに一方的に脈絡ない技術経営判断の結果、中止した。 

 当該研究開発は、2008年7月24日の当社プレスリリースでも、「全無機量子ドット・エレクトロルミネッセンス素子研究グループがJJAP論文賞を受賞」などとして、「この度、HOYA株式会社 R&Dセンター QD-EL研究グループ(小林哲 主任研究員、谷由紀研究員)は、川副博司 東京工業大学名誉教授と共著の全無機量子ドット・エレクトロルミネッセンス素子に関する論文が認められ、(社)応用物理学会より第30回(2008年度)応用物理学会論文賞(JJAP論文賞)を受賞することとなりました」と、重要な研究開発活動の成果であるとして、3年弱前の時点でも、投資家に広く公表されている。
さらには係る研究開発の蓄積として社内独自に長年改良を行っていた機械を、大阪大学松尾研究室に、ほぼ無償で寄贈するという暴挙に至っている。当該製造技術等の構成は、二十メートル四方のクリーンルームとカスタムメイドの備品からなり、これらを再び初めから構築しようとすると少なくとも二十億円程度の費用が発生することは明らかである。

 また人材の育成が企業としての主要な競争力の源泉であるにもかかわらず、このような顕著な研究開発の能力を持つ小林哲研究員を、社外(本ケースではサムソン電子)へ転職させ、引き留める積極的な行動も行わなかった。

 以上のような多額の費用を費やしたはずの当該プロジェクトを一方的に中止する等の意思決定については、最低限の分析を行えば、これら意思決定は技術経営の観点から不適切であることは、簡単に理解できたことである。技術開発に何ら成果がないことは、株価を長期低迷させる主因の一つとなっている。このような会社に多大なる損害を与えた執行役(技術担当)の萩原太郎氏の業務執行行為は任務懈怠を始めとする善管注意義務(ないしは忠実義務)に違反する行為と言わざるを得ない。

 加えて、萩原太郎氏が技術担当執行役に就任した平成二十一年六月以降、新規事業に関する技術開発には何ら成果がなく、萩原太郎氏の業務執行行為により発生したこれら投資に関する損害についても、萩原太郎氏は善管注意義務(ないしは忠実義務)違反として損害賠償責任を負うべきである。

 前記、萩原太郎氏の善管注意義務(ないしは忠実義務)違反の結果、発生した貴社に対する損害額は、第一に長年にわたった研究開発の成果であるところの機械を大阪大学にほぼ無償で寄贈した二十億円程度の損害額、第二に当該プロジェクトを継続あるいは少なくとも社外に売却した場合には、機械を除いても、最低でも三十億円程度の金銭的価値を生み出していたと予想されることに係る機会費用であり、合算して総額約五十億円の損害が貴社に対し発生したと認められる。これら算出額は、仮に当該研究開発プロジェクトに少数持分投資した場合には、投資前価値が五十億円程度になることは容易に予想されるうえ、逆に当社が同研究開発活動を買収した場合には百億円以上の費用が発生することを考えれば損害額の下限と言ってもよい。

 さらには、萩原太郎氏が技術担当執行役に就任して以来、光通信部品、3CSiC、微細加工の主要プロジェクトについて何一つ進捗についての成果が見られず、一つも新規技術開発に係る起案がなく、本来新規プロジェクトを起案し新たな事業を起こす事がR%Dセンターのミッションである事を考慮すると職務怠慢とも言える行為であるが、そもそも萩原太郎氏は東京大学の機械工学科(学士)を卒業しており、日産自動車入社後も車のボディーの開発などに主たる時間を費やしていた人物であり、硝子研磨や加工などの材料科学や眼科領域、光学あるいは医療機器(旧ペンタックス内視鏡分野は赤字に転落しているが売り上げはまだ大きい)を主たる事業分野とする当社の技術担当執行役として適格性がないことはもともと明らかである。一般に他社の例を見ても、企業の研究会開発部門の長に任命される者は、①博士の称号(最低でも修士)を有する、②学界や特定の研究機関で顕著な活躍がある、③海外留学経験がある等の条件を満たす必要があるが、萩原太郎氏には、それに匹敵する研究機関での実績や外部研究機関からの賞賛の実績が全く無い。萩原太郎氏が前職で従事していた燃料電池のプロジェクトも、日産自動車で不要となった部門であり、なんら成果もなかった。従って以上のような背景の人物が技術担当執行役として不適切であることは、元社外取締役で日産自動車名誉会長(当時)の塙義一氏であれば容易に理解していたことである。自社で不要となった人材を、自らが社外取締役となる会社に押し付けた背任的行為ともみなすことができる。

 従って、かかる実績の存在しない人物を技術担当執行役として取締役会への推薦を行ったことについて、塙義一氏ならびに指名委員長である椎名武雄氏については、善管注意義務違反、あるいは忠実義務違反が認められることは明らかであり、萩原太郎氏の指名に特に責任のある2名については、最低でも二年分の研究開発費の六十億円の十分の一である六億円程度の賠償責任を負うと解するべきである。
従って、会社法八百四十七条一項に基づき、貴社の技術担当の執行役である萩原太郎氏を被告として約五十億円、塙義一氏と椎名武雄氏については約六億円の損害賠償を請求する訴えを提起することを貴社に対し、請求する。早々

参考
全無機量子ドット・エレクトロルミネッセンス素子研究グループがJJAP論文賞を受賞
2008年7月24日 HOYA株式会社 R&Dセンター
この度、HOYA株式会社 R&Dセンター QD-EL研究グループ(小林 哲 主任研究員、谷 由紀 研究員)は、川副 博司 東京工業大学名誉教授と共著の全無機量子ドット・エレクトロルミネッセンス素子に関する論文1)が認められ、(社)応用物理学会より第30回(2008年度)応用物理学会論文賞(JJAP論文賞)を受賞することとなりました。

受賞対象の論文に著された素子は、その構成部材を全て無機材料とした面状自発光素子(エレクトロルミネッセンス素子: EL素子)です。化学合成手法によるコロイダル量子ドットを発光層の原材料に用いることにより、CRTに比肩する純色の自己発光を実現できることが特徴です。

コロイダル量子ドット: QDは、液相にて化学合成され、表面を界面活性剤有機分子で覆われた、数ナノメートルの直径を有する半導体ナノ結晶であり、極めて色純度の良い高効率の蛍光を発する優れた発光材料として知られています。しかし、その表面に存在する界面活性剤や、QDを分散させる為に用いられる有機溶剤に由来する有機物の存在が、無機材料で構成される発光素子への応用を拒んできました。

QD-EL研究グループは、コロイダルQDから有機物を除去しつつも、QD構造を保存し、高効率純色発光特性を有する半導体発光活性薄膜を比較的低温で形成できる成膜技術を既に開発しています 。この度、二重絶縁層型薄膜EL素子の発光活性層の形成に新成膜技術を応用し、初めて量子ドットからの高純色自発光(電子・正孔の量子閉じ込め準位間発光)に成功いたしました。過酷な環境下でも、全無機構造が高い信頼性をもたらすことが期待できます。また、プラスティック基板を使用することが可能で、さらに全ての電極に透明導電材料を用いることで、フルカラーのフレキシブル透明ディスプレーも構成可能です。今後は、各構成部材の調製を行い、高輝度化のための開発を行っていきます。


本件に関するお問い合わせ:
196-8510 東京都昭島市武蔵野3-3-1
HOYA(株) R&Dセンター
企画部 探索評価 QD-EL担当
liquid@sngw.rdc.hoya.co.jp
----------------------------------------------------------------------------
*1 “Quantum Dot Activated All-inorganic Electroluminescent Device Fabricated Using Solution-Synthesized CdSe/ZnS Nanocrystals” Jpn. J. Appl. Phys. 46, L966 (2007)

2011年5月18日水曜日

祝、椎名武雄氏が取締役退任

小生の株主提案の圧力により、椎名武雄氏がHOYA株式会社の取締役から退任します。遅ればせながらですけれども、株主提案の一つの成果です。今後よりよい企業統治と、取締役会を目指すために、皆様の力もお借りして、戦っていきます。なお小生は、児玉幸治氏と茂木友三郎氏の取締役の不再任をめざす議案も、すでに提出しています。

そもそも9年を超える再任期間を持つ取締役は原則独立性がないというのがイギリス・ロンドンの証券取引所のルールなのです。それが16年というのはあまりに一般的な資本市場の感覚からかい離しているのではないかと。さらに言えば、椎名氏の罪は、児玉幸治氏や茂木友三郎氏などの同世代の人間のみからなる仲良しクラブ的な取締役会を作ったこと、丹治宏彰氏や鈴木洋氏によるR&Dの運営が10年以上の間支離めちゃくちゃなのを一切放置していたこと、さらにペンタックス買収の高み掴みに反対しなかったことです。今後、これらの問題を追及していきたいとかんがえています。

(以下引用)
時事通信 2011/05/10-19:53 椎名氏が社外取締役を退任=HOYA HOYAは10日、社外取締役の椎名武雄氏(日本IBM名誉相談役)が6月21日付で退任すると発表した。日本IBM会長だった1995年6月 に就任し、16年間務めた。後任には麻生太郎元首相の弟で、医療関連事業などを手掛ける麻生(福岡県飯塚市)の麻生泰会長が就任する予定。
 椎名氏ら社外取締役をめぐっては、HOYAの経営陣と「情実的な関係にある」として、創業家株主が6月の株主総会に、退任を求める株主提案を会 社側に提出している。(了)

2011年5月15日日曜日

眼科部門における世界的な再編の動き

(取締役選解任や定款改正議案の多くの議案と関係する記述として、参考してください)

眼科部門における世界的な再編の動き

Alcon社:従来スイスの食品大手ネスレ社の上場子会社であったが、同じくスイスの製薬大手ノバルティス社が、2010年12月にネスレ社から77%の株式を取得している。時価2011年4月時点の総額は約4兆円である。
Bosch Lomb社:2007年に、プライベートエクイティー投資会社であるWarburg Pincus社が$3.67 Billion USDで買収している。
Advanced Medical Optics社:製薬大手のAbbotts Laboratories社が、2009年に$2.8 Billion USDにて買収している。なおAbbott Laboratories社の2011年4月ころの時価総額は、6兆円以上である。
なお眼科分野は、網膜の病気である加齢黄斑変性症が、今後の市場と成長性などを考えると大きく、まだ有望な効果的な治療のための新薬開発の余地がある。一方緑内障に関しては、現状の薬剤の特許が切れるので、当社でもジェネリック医薬品を製造して販売できるようになり、むしろ薬物伝達(Drug Delivery)技術などが差別化要因になるので、当社が優位に事業展開する余地がある。世界的な眼科分野での再編と事業展開の動きに対し、当社経営陣は過去10年間に何もできずに取り残されているのが現状である。提案者が推奨する企業戦略は、Balamurali K. Ambati博士の記述を参考にされたい。

2011年5月12日木曜日

(取締役選解任や定款改正議案の多くの議案と関係する)総括的な提案内容(3)

 また提案者による企業経営の抜本的な改革案を示します。第一に、もっとも資本効率の高い眼科事業に資源を集中的に投下するべきです。特に眼科医薬に対する参入を行い、同業のAlcon社やAbbott Laboratories社が目指しているような、眼内レンズと眼科医薬をクロスセリングするような戦略を取るべきです。なおすでに内視鏡事業は赤字に転落していますので、競争優位は持っていませんので、撤退も視野に入れるべきです。医療分野の中では眼科に関する部門以外には基本的には投資せず、主要なコア事業として眼科領域に特化するべきです。日本のアナリストなどにはあまり認識されていませんが、先進国では高齢化が進み、高齢者に多い緑内障や白内障、加齢黄斑変性症の患者数が年率15%程度で急増していますので、世界の投資家には眼科領域は急成長かつ利益率の高い事業分野だとみなされています。この分野の最大手であるスイスのネスレとノバルティスを主要株主とするAlcon社の時価総額は日本円で約5兆円です。また製薬診断大手であるアボット・ラボラトリー社は主要な眼内レンズメーカーであるAdvanced Medical Optics社を買収することにより、眼内レンズを自らの製品ラインに加えることに成功しています。その他でも、ボシュロム社をPE投資会社のウォーバーグ・ピンカス社が買収するなど、世界的に眼科領域では幅広い再編が起きているにもかかわらず、日本の眼内レンズメーカーである当社だけが、その流れから取り残されているのが実情であります。眼科分野は、すでに眼内レンズメーカーであり、眼科医との強いネットワークと販売力を持つ当社が、眼科医薬を同時に販売するようにあれば、高い事業効率が期待できます。実際に、北米等でAlcon社が圧倒的な収益を誇っているのが、世界で眼科医が必要とする商品である眼科医薬と眼内レンズを同時に供給できる実質唯一の会社であることがあります。そこにすでに製薬会社である大手のAbbott Laboratories社が、第二のアルコンの地位を狙って眼内レンズメーカーを買収して参入してくる結果になってくるわけです。このような世界的な眼科領域での再編にただ1社遅れているのが当社であり、ペンタックス社のような収益性にきわめて劣る会社を1500億円近いコストで買収するならば、加齢黄斑変性症の有望な新薬候補を複数買収するなり、Advanced Medical Optics社を買収していればよい(もし買収していれば資本力のある大手のAbbott社の眼科領域への参入を阻止できたのである)のであり、経営陣と取締役会、及びこの程度の判断をしている取締役選任に賛成推奨している議決権行使助言会社や機関投資家の議決権行使担当者たちの無能は、極まりというべきである。この点に関しての詳細は、17歳で医学博士となった天才的眼科医で、加齢黄斑変性症の研究分野での第一人者でもあるBalamurali K. Ambati博士(ユタ大学准教授)による別途資料を参考にされたいが、現在加齢黄斑変性症は有望な新薬がないが、症状の進行を止めるという程度の効果しかない、抗がん剤の転用であるLucentis(Genentech社が開発)は、1000億円近い売り上げ(製薬事業の売上比の利益率は30%程度だと予想される)をすでに誇っており、また緑内障向けのXalatan(ファイザー社)もいわいる1000億円以上の売り上げを誇るBlockbuster drugであります。加齢黄斑変性症は、より効果的な新薬が開発されれば、市場を席巻できる大いなる可能性を持っているし、緑内障向け新薬は特許切れによりジェネリック医薬品でも販売できるようになります。カメラ事業のような資本効率の悪い分野に再投資を行うのではなく、このような急成長かつ有望な分野に、積極的に投資先を変更して振り分けるべきです。なおこのような業界の詳細について知らなくても、普通に経営学の授業を受けた人間ならば、常識的に眼科部門に再投資するべきだという結論になるとは思いますが。

 第二に、当社の事業開発は、眼科以外では材料科学に特化するべきです。当社の優位性のある経営資源は、ガラス加工及び研磨等の材料科学と眼科領域であり、ペンタックスから引き継いだ光学技術は、キャッシュフローを生むような経営優位性を持っていません。またペンタックス社から引き継いだカメラ事業等は、早期に分社化等を行うべきです。材料科学の領域においては、日本企業はまだまだ世界的にも優位性を持っている事業が他社の例でも数多くあり、当社の80年代までのような事業開発に戻って、真剣に研究開発を行うべきです(以下を参照)。いずれの事業も、ペンタックスのカメラ事業などと比較して、極めて高い営業利益率、資本効率を誇っていることは確実であり、材料科学メーカーの原則に戻るべきであります。もちろん以下の企業の事例は、個々の企業の基盤技術に基づいているのであり、このような基板技術を育成し獲得していくことが経営戦略上、明らかに必要となりますが、このような中長期での材料開発はまさに日本企業が従来から得意としていた経営分野なのであります。

 第三に、クリスタルグラスなどで高い価値を有するブランド価値を最大限活用するための経営戦略をとるべきで、執行役としてChief Brand Officerを置くなどの手段をとるべきです。具体的には、HOYAブランドによる化粧品の販売や、プライベート・エクイティー投資会社との共同によるホテル経営などの運用なども検討するべきだと思います。例えばフランスのクリスタル・メーカーであるバカラ社は、Starwood Capital Groupにより、ハワイのホテル事業を投資家グループと経営するなどの新展開をみせているのであり、世界的にも女性や年配の消費者に高級ブランドイメージとして認知されている当社のブランドとしての経営資源(例えばこのような)を利用して、イタリアやフランス企業のブランドマネージメントにより、多額の付加価値をつけているように、株主利益をさらに増加させる経営展開を行うべきである。
そして以上のような企業戦略を実行するためには、ペンタックス部門のカメラ事業は売却、分社化などの手段により早期に事業をやめるべきで、伝統的な事業領域であるメガネレンズのほか、材料科学と眼科という2つの領域に資本を投入する先を限定するべきです。なお医療用内視鏡事業は、洗浄機を製品として持っていないという致命的な欠陥を有しているうえ、日本国内でほとんどシェアを有しておらず、欧州などに少しだけシェアを持っているだけです。ペンタックス買収は当社の株主価値の増加にとって全く持って意味不明であり、もしペンタックスの医療分野がほしいのであればそれだけ買えばいいのであり、長年赤字を垂れ流しているカメラ事業のような事業を1500億円もの大金を出して買収する経営上の合理性は当時より論理的に考えて全く存在せず、このような判断は論外と言えます。また当社は、ガラス磁気ディスク基板に関するメディア事業をウェスタン・デジタル社に売却していますが、この判断により、事業の見通しの表において評価したように、コニカミノルタなどの競合相手から当社から垂直磁気方式等の差別化しうる技術が失われました。しかし関係者の意見としては、メディア売却の選択は、正しいとのことです。なお関係者が何故正しいと言っているかと言うと、「他社と比較し当社は、R&D部門を事業部に持たないため、開発に必要なリソースと開発費・時間を確保できない。メディアの開発には、金と時間が必要であるが、今の当社の体制では、その供給は、期待できないので、開発の先が見えないのであれば、売却して現金化できる時に売却した判断は、まだましということで、正しい選択だ」ということだそうです。また有価証券報告書におけるセグメントわけについて、実質赤字になっている内視鏡部門をライフケア分野に入れて、内視鏡部門が赤字になっている実情を隠蔽する脱法行為もやめるべきです。

 また提案者が従来から退任を要求してきた丹治宏彰氏が、最高技術責任者から退任した後も、これら問題は全く改善されていないか、むしろ実態は悪化しています。提案者は昨年の株主総会で萩原太郎氏の技術担当執行役からの退任を要求していますが、萩原氏には材料科学と眼科領域をコア優位とする当社の技術担当役員として必要な教育的訓練あるいは実務的背景を有していないばかりか、前職の日産自動車での燃料電池開発部門は、カルロス・ゴーン最高経営責任者就任以後の日産自動車の電気自動車に集中するとした戦略から外れて不要になった部門であり、また燃料電池の開発自体も特に成功していません。それ以前に従事していたのは車のボディー開発等であり、研究部門の経験や新規事業の創出実績も持っていないにもかかわらず、このような人物を技術担当役員にすること自体が、指名委員会の機能不全を意味していると思います。例えば3C SiC事業については、10年近く開発を行っているにも関わらず、何ら成果が出ていませんので、すでに終わった事業計画と言われています。またXponent社への資本参加も失敗していますし、ナノインプリントも成果を上げる見通しはなく、生体適合性材料、外径0.8mmの微細ファイバースコープなども、大きな成果を上げる見通しはまったくなく、ナノ粒子、高密度実装基板、Radiant Images社など、すべてが場当たり的な技術開発の結果として失敗しています。これらは、萩原太郎氏が技術担当執行役になって以降、何ら問題点が改善されていないばかりか、むしろ悪化しているとさえ言えます。以上のような問題があるので、研究開発部門を再構築し、M&Aによる企業価値の創出の実務が全く分かっていない鈴木洋氏らによる企業価値を毀損し続ける企業買収や売却を早期にやめさせなければ、株主価値が継続的に破壊され続けますが、現在の社外取締役にはそれを是正する機会が今まであったにもかかわらず、なんら放置しているのが実情なのです。実績のある技術担当執行役候補は残念ながら社内にはほとんどいないのですが、何としてでも研究開発体制を改めて立て直し、事業部の予算としても中長期の競争力維持のための研究予算を配分し、中長期的に材料科学の分野と眼科領域で優位性を持つ事業体に変えなければ、当社の株主に高い利益を配分することはできないと確信します。
これらの問題ある企業統治の現状や、鈴木洋氏らがでたらめな技術経営を行って株主資本を無駄遣いしつづけていることを停止し、さらに企業価値を毀損する企業買収や事業部の売却判断を実行することを阻止するために、現状を改善するにはまず、現在の取締役会と指名委員会から独立した取締役候補である会社法の専門家である溝渕彰氏(香川大学法科大学院准教授)と、眼科分野の専門家であるBalamurali K. Ambati博士(ユタ大学医学部准教授)の2名を取締役会に送り込み、そして企業統治改善に貢献する定款変更議案に賛成するように、株主各位には推奨したい。なお提案者は、取締役会の構成が急速に変わることを懸念する株主がいることを一応は考慮し、解任議案を提出している椎名武雄氏、茂木友三郎氏、児玉幸治氏以外の再任の取締役候補に対して賛成することは特に妨げません。また執行役の中では、鈴木洋氏と萩原太郎氏が特に問題であるためこの2名を執行役から外すべきであり、江間賢二氏と浜田宏氏は当面の間は、問題があるにせよ、当社のまともな後継計画のなさを考慮すると、執行役としては再任されるべきだと考えています。

2011年5月10日火曜日

(取締役選解任や定款改正議案の多くの議案と関係する)総括的な提案内容(2)

実際のところ、当社の指名委員会は全く有効に機能していません。例えば、鈴木哲夫氏の長年の友人である椎名武雄氏(昭和4年(1929年)生まれ)が指名委員長を務めていますが、前年の株主総会で、鈴木洋氏は「社外取締役のサーチは行っているが、良い社外取締役を探してくるのは難しい」と述べています(なお指名委員会の専権事項について権限を持たない執行役を兼ねている取締役が回答していることを、説明義務違反として係争中である)が、例えばアステラス製薬は女性の取締役として大石佳能子氏を、女性の監査役として黒田由貴子氏を、2010年の株主総会に向けて候補として指名していますし、企業が採用活動に一定の資源を使って競争しているように、よい取締役を探してくることも他の企業と競争してでも行うべき指名委員会の業務の一つであり、彼ら取締役が怠慢であること以外の何物でもないとしか言いようがありません。なお社外取締役を探してくるのは指名委員会の専権事項であり、このような質問には説明義務を有する指名委員会の委員が答えるべきである。例えば提案者の先輩である東京大学の卒業生である児玉幸治氏や小枝至氏、あるいは以前の取締役である塙義一氏は、東京大学の女性卒業生の団体である「さつき会」などに自ら接触し、女性の社外取締役を積極的に探せばいいのであり、このような努力をせずに、自らの取締役としての再任だけを狙っているならば、株主に対する背任行為だといわざるを得ません。また17歳で医学博士を取得したギネスブック記録保有者であり、現在の眼科医療研究の第一人者であるBalamurali K.Ambati博士(ユタ大学医学部准教授)を取締役候補にしない積極的な理由を指名委員会は説明されたいと考えています。

また特に、監査委員会も全く機能していません。例えば監査委員会の機能不全については、本来であれば株主が取締役を選び、取締役が執行役を選ぶという本来の委員会設置会社のあり方がある一方で、私を含む株主は直接監査委員会や指名委員会の事務局に接触することができず、すべての連絡が鈴木洋氏の下にいる中川知子という従業員を通じて行わなければいけないようになっています。実際に監査委員会の機能不全はとんでもない事態を発生させています。その一例が、すでに指摘しているように、株主総会決議取消訴訟の発生事実を適時開示せず、株主に隠ぺいしてきたことです。まさに当社元幹部が、「社内と社外が同数になった段階で、社外取締役が結束すれば、社長のクビすら、すげ替えることができるようになった。こうした緊張関係の中で、業務執行に関わらない社外取締役の権限が高まれば、経営者への監視も高まり、コーポレートガバナンスも機能するというのが、制度を導入した哲夫氏の説明です。しかしそれは欺瞞にすぎない気がします。」(「『偽りの米国流』で屈折するHOYA『父子鷹』経営」「ZAITEN」2010年1月号)」42ページ)とコメントしている内容が、すべてを物語っていると考えられます。

まとめると、当社の企業統治の問題点は、コーポレート企画室の中川知子という従業員らが、執行役鈴木洋氏の強い影響力の元で、取締役会(及び指名、報酬、監査の三委員会)のアジェンダ等を設定し、社外取締役らは完全なイエスマンになっていることです。実際に去年の株主総会でも、「秘密投票で投資家の皆様の議決権行使は変わらないと考えている」「ストックオプション保有者のヘッジを制限するのは、財産権の問題」などという、機関投資家の常識などからすれば、浮世離れした取締役会の反対意見を述べていましたが、これは中川知子氏が実質的に作成し、そのまま社外取締役が何の反論もせずに参考書類に掲載したという経緯があります(中川氏本人がドラフトを作成していることを明言していることは、公開の裁判資料でも確認できます)。当社の企業統治の現実はこの程度のものです。なお「そのようなヘッジを行うことは想定できず」などと書いて参考資料に配っていましたが、実際に大株主には、投資銀行がOTCの金融デリバティブを作って売ることもできるのであり、このような実情を踏まえて虚偽の事実を公然と参考書類に掲載して行った決議は、取り消しの対象にすらなりうるものです。当社においては、(例えば賞与の決定や人事権を有する)最高執行役の部下であるコーポレート企画室の幹部社員が、会議のアジェンダや資料作成を行っており、社外取締役らがそれに異議を唱えることはまったくありません。

米国でも最高経営責任者や執行役が実質的に取締役の決定を支配するということが顕著にあり、エンロン事件などの数多くの不祥事が繰り返されてきたために、①最高経営責任者と取締役会議長の分離、②執行役を交えない社外取締役だけの経営会議開催義務、③コーポレート・リーガル・カウンシルとは異なる取締役会のための法律顧問の設置、などが企業統治の専門家によって推奨されるようになっており、これらについての株主提案は米国でも、多数の賛成票を集める傾向にあります。当社においては社外取締役が機能していないのは、鈴木哲夫氏の友人である椎名武雄氏を中心に現在の社外取締役が構成されているからです。そもそも世襲であり教育的にも実績的にも平凡あるいは平均以下である鈴木洋氏を最高経営責任者や最高執行役にしていることが問題なのですが、経営者の後継計画もないし、まさに当社の株価の低迷は企業統治の欠陥から生じたといって認定できる。従って、トップ指名に責任のある椎名武雄氏は少なくとも取締役会から去るべきです。定款変更議案については、機関投資家の方にも見慣れない議案もあると思いますので、丁寧に説明したい。質問については、当方のTwitterアカウント(@yutakayamanaka)や(http://yutakayamanaka.blogspot.com)でも質問を受け付けていますので、そちらも活用いただけるとありがたいと考えている。個人投資家の皆さんと、日本の子供たちに継承していくに誇れるような資本市場を共に作っていければと考えている次第であります。(続く)

2011年5月9日月曜日

(取締役選解任や定款改正議案の多くの議案と関係する)総括的な提案内容(1)

(取締役選解任や定款改正議案の多くの議案と関係する)総括的な提案内容

 今回の株主提案を行うようになった経緯を説明したいと思います。当社はバブル経済崩壊後の日本経済の初期の低迷を尻目に、90年代に株価が約4倍になるなど、この時期より日本の資本市場における代表的な優良企業として認識されるようになる一方で、2003年6月に委員会設置会社の形態を採用し、社外取締役が過半数の取締役会を有しているにも関わらず、2000年代以降、特に2003年以降に、長期的な株価の低迷という現象が観察されます。これは客観的な株価の推移を鑑みるに明らかなことですあり、特に、2010年4月6日現在、当社株価は過去1年でも30%下落していますが、日経平均の下落率は15%にとどまっています。2000年6月株価の終値は2375円であり、現在(4月11日時点)の株価は1700円であるので、株価は中長期的に低迷しています。特に2000年代初頭の株価上昇は、80年代までの事業開発の成果の反映であるとすると、直近5年から6年の株価の低迷は著しいといえます。

 提案者は、なぜ2000年以降に株価ベースで見たときに当社の企業価値が創出されないのか、株価が低迷しているのか、という問題は、最高経営責任者・最高執行役である鈴木洋氏の経営者としての能力の不在や、ペンタックス買収の失敗、過去11年間で一つの新規事業プロジェクトが収益に結びついていないことなどが重要な要因ですが、より根源的には当社の抱える「企業統治の偽装」という問題と密接に関わっていると考えます。すなわち最高執行役がR&Dプロジェクトの創出に関わる意思決定や企業の買収や売却の決定などにおいて、きちんと訓練を受けた職業的ビジネスパーソンならば首をかしげたくなる判断をしても、鈴木洋氏の問題ある意思決定について、やめさせたりする監視機能が全く果たされていないという問題があります。提案者としては、現在の当社の取締役会と指名委員会等が株主価値を最大化させるようにまったく機能していないので、指名委員会と現取締役会から独立した社外取締役候補者を1名ないしは2名を取締役に選任することが、取締役会の監視・監督機能、しいては株主利益に帰すると考えます。

 基本的に2000年以降、あるいは2003年以降に日経平均を下回るような株価の推移を生み出しているのは、新規事業を創出するR&D部門において脈略もない経営方針が10年以上も延々と続けられ、資本の無駄遣いは行われているにも関わらず、社外取締役が提案者からの指摘にも耳を貸さず、まさにこの問題に関心を持たず、介入も行わないということが最も大きいと考えます。もちろんその他の技術経営の問題点、例えばペンタックス買収の失敗やメディア事業の売却等、長期的な株主利益に反するような経営判断がとられることも、株価低迷とは無縁ではありませんし、以上のような問題あるM&A等を執行役、特に鈴木洋最高執行役らが行おうとしても、当社においては、社外取締役や、浜田宏氏、江間賢二氏らが取締役会で異議を唱えることはありませんし、社外取締役らがそういった意思決定に歯止めをかけることもありません。取締役会が機能不全を起こしているといわざるを得ないのであります。さらにとんでもないことに、平成22年6月の株主総会に関する株主総会決議取消訴訟が平成22年9月にはすでに東京地方裁判所に提起されていますが、この訴訟提起の経緯となった株主総会事務局の対応は上場企業として論外だといわざるを得ないのですが、当社は投資家の判断に重大な影響を与えることが確実な本件訴訟発生の事実を一切開示しないという暴挙を行っていますし、提案者が2月に最高技術責任者であった元取締役・前執行役に対する訴訟提起請求の書面の中で、監査委員会に通告しているにもかかわらず、いまだに監査委員会は提案者に対して何の通知も行わずに、そのままになっています。通常、昨今の上場企業の情報開示強化の流れでは、株主総会に関する決議取消訴訟を提起されれば、すぐに適時開示するのが当たり前ですし、他の上場企業、例えば立飛企業が投資家から同様の訴訟提起を受けた時にはすぐに開示しています。また株主提案を受けた場合も同様であり、例えばシャルレでも、すぐに開示を行っています。これら事実関係を鑑みるに、執行役が上場企業を預かる社会的責任感や、法令遵守の意識に乏しいことを表していますし、さらには監査委員会委員の取締役が執行役の不正行為をチェックすることを放棄しているといえると思います。「形を作れども魂入れず」のガバナンス体制を放置していると、企業価値の毀損が継続的に続いて株主価値に重大な影響が発生すると考えています。

 資本市場からの評価が低くなっている理由については、①現在の主力事業の将来性が明るくない、成長性が低く、長期的に減益の可能性すら強い、②新規事業の創出実績がなく、その見通しもない、という2点に集約されることを、提案者は3年前にすでに主張しています(http://www5.atpages.jp/ymnk/top.html を参考)。まず認識として重要な点ですが、当社が資本効率の高い事業を創出することに成功したのは、80年代後半までの研究と事業開発の成果であり、90年代半ば以降は新規事業の創出に全く成功していません。メガネレンズ、ガラス磁気ディスク基板、フォトマスク、マスクブランクス、メガネレンズ、眼内レンズ、コンタクトレンズ小売などの事業はすべて80年代末までの研究開発と事業開発の成果であり、これら80年代末までに開発されたガラス研磨技術等の差別性のある技術に基づいた事業は、参入障壁が高いために、極めて高い資本効率を達成することができました。まさに高い資本効率を達成することができたのは、80年代末までの事業開発の成果であり、「社外取締役が過半数の先進的な企業統治」などはこの高い資本効率の達成とは無関係です。一方で、90年代終わりから2000年代前半までは、既存事業は収益ベースでは成長していたものの、特にガラス磁気ディスク基板の事業は、代替品であるフラッシュ・メモリーが記録媒体として台頭してくることが中長期的には予想できていたことなどから、新規事業の創出が急務であったわけですが、2000年代の取締役は、これら経営課題に対して、何ら手を打てず無能であったわけです(しかも新規事業を創出せずとも、固定の社外取締役報酬を受け取れるので、社外取締役には、この問題に介入するインセンティブを持っていませんでした)。

 このような観点から、提案者はすでに丹治宏彰元取締役、前執行役に対する損害賠償訴訟を起こすことを監査委員会に提起しています。またメディア事業の売却による垂直磁気方式技術の放棄などに伴いガラス磁気ディスク基板事業の優位性は、コスト競争だけとなり、数年以内にコニカミノルタなどの同業他社が同水準の製造コストによる供給能力を持つ見込みであり、当社の主力事業の将来性は誠に暗いといわざるを得ません。また実際のところ、米国法人の責任者であった鈴木洋氏は、90年代後半に自らの主導したすべてのベンチャー投資を実質的に破産、失敗させましたし、実際には何ら新規事業の創出に実績を持っていないにも関わらず、このような能力しか所有していない人物の経営判断に、他の執行役や社外取締役が何ら取締役としての忠実義務や善管注意義務を果たさないということが問題なのです。これら経営に関する問題について、取締役らに再三通告しているにもかかわらず、いまだに何ら問題が改善されておらず、この一点だけ見ても担当執行役だけでなく、すべての取締役に善管注意義務違反、忠実義務違反があると考えています。特に社外取締役らは、「仲良しクラブ」に堕落しており、ダメな日本の資本市場を象徴するような存在に堕ちています。またフォトマスク事業の競争環境も急速に悪化していますし、余剰資金の再投資先が明らかに経営上の課題とされた2000年代以降に経営陣による成果が全くないことも、株価に反映されているというべきでしょう。

 なお鈴木洋氏が判断したでたらめなベンチャー投資が破産しても、財務諸表等では「軽微な影響」などと開示されますが、そういった経営判断の積み重ねが株主価値の毀損を招くのであり、長期的な株式保有を考える投資家に対しては、提案者は特にこの点を警告しておきたいと思います。(続く)

2011年5月6日金曜日

私が株主提案をする理由―日本の資本市場改革の試案も含めて―

東大経済学部の卒業生の団体である経友会の「経友180号」に、小生の原稿が掲載されますので、特に卒業生の方はぜひ一読ください。

私が株主提案をする理由―日本の資本市場改革の試案も含めて―

日本の資本市場が低迷して久しい。中国やインドの株式市場に20年前に投資をしていれば、非常に高いリターンを得ていたし、北米や欧州の資本市場でも基本的には株価は中長期的には上がるものである一方、日本株インデックスだけが20年間の低迷を続けている。

背景に、日本の上場企業における「企業統治の不在」という構造的欠陥がある。日本の上場企業の経営者は、会社の一株当たり価値を上げ、配当またはキャピタルゲインで株主利益に貢献する能力と動機に乏しいし、この点で社外取締役制度が全く機能していない。日本の家計の年金の運用の大きな部分が日本株で行われているということも考えれば、企業統治の改善により株価の上昇を行うことは、国民的利益に直結する。日本版ERISA法(Employment Retirement Income Security Act:従業員退職所得保障法、米国では73年に制定)により、年金運用を行う機関投資家に議決権の行使を義務付けることも急務であると考える。小生は、全米1位の会社法研究者であるLucian Bebchuk教授のもとで、ハーバード大学法科大学院に留学して帰国した溝渕彰准教授(香川大学法科大学院)など、幾人かの同世代の有志とともに、日本版ERISA法制定を目指すささやかな運動も行っている。2009年8月の政権交代に失望する声は多いが、上場企業の年間1億円以上の役員報酬の個別開示と株主総会の議決権行使結果の開示を10年3月の金融庁により内閣府令で決めたことは、政権交代の成果だと評価することができる。

小生は、もともと祖父兄弟が創業したHOYA株式会社(旧保谷硝子)の2010年6月の株主総会に対して株主提案を行った。2011年6月向け総会でも株主提案を行う予定である。我が国の会社法は、一定要件を満たす株主による株主提案による議題や議案を株主総会の招集通知や参考書類に掲載する義務を課している。2010年には役員報酬の個別開示が特に注目されたが、株主提案の議案説明字数を増加させる提案や、執行役を交えない社外取締役だけで経営会議を年1回以上開催する議案も相当高い賛成票を得たことが、相当の話題となった。ストックオプション所有者に対してコールオプションを売却してプットオプションを所有するなどの方法のヘッジを禁止すること、取締役の株式売却の30日前の事前予告と開示を行うことなどの議案も、議決権行使助言会社世界第一位のISS社の賛成推奨を得た。14歳で大学を卒業し17歳でギネスブックに世界最年少の医者として記録されているインド系アメリカ人で世界第一人者の眼科研究者であるBalamurali
K. Ambati博士(ユタ大学医学部准教授:1977年生まれ)を株主提案の取締役候補としたことや、社外取締役の兼任数の制限や、秘密投票、取締役選任議案における累積投票の採用、公益法人の兼任状況の開示、退職した取締役の報酬の開示、社内インサイダーの取締役議席数の制限なども論点に上っており、世界有数の資産運用会社である当社筆頭株主のキャピタル・リサーチから、定款変更議案14議案中10議案に賛成をいただいたことに勇気づけられた。

なぜ株主提案を始めたかと言えば、どう考えてもおかしいことが公然と放置されていると考えたからだ。過半が75歳を超えている社外取締役構成は常識と照らしてもおかしい。取締役会が「仲良しクラブ」に成り下がってしまっていることが悲しい。実際に、当社においては中興の祖と言われる名誉会長の友人が指名委員会委員長を8年も務めているが、彼らの縁故でしか社外取締役を集めていないという点に問題がある。過半数の社外取締役の年齢が75歳以上というのは、欧米の上場企業としても例がない。会議体チームの能力を上げるには、構成員の多様な背景があるほうがいいはずだ。

もし社外取締役の質や能力が会社の価値にとって重要であるならば、取締役選任議案を株主総会に上程する権限を持つ指名委員会は、相当な費用と労力を使ってでも有能な社外取締役を世界から探してくるべきであり、それを怠っているなら、善管管理義務違反として株主代表訴訟の対象にすらなりうるのである。よく社外取締役の良い人材がいないということをいう人がいるが、彼らの社外取締役を探す方法は、取引銀行や取引先、監査法人、弁護士、経営陣の知人などをあたるというものだ。しかし良い人材を採用するのが難しいのは、何も社外取締役だけではなく、人材採用が難しいからといって採用活動を中止する企業はなく、人材が企業価値の源泉の一つだと考えるからこそ、新卒採用や中途採用、経営幹部の採用に企業は相当な労力と費用をかけるべきなのだ。なぜ社外取締役だけが例外なのか(石田猛行「2011年ISS議決権行使助言方針」商事法務3月5日号No.1925に同見解が紹介されているのでぜひ参考にされたい)。そもそも社外取締役の公募だってしてもいいのである。主要政党でさえ、選挙の候補者発掘に公募をする時代である。年配世代は、自分たちが社外取締役養成の学校でも作って、優秀な後進を養成したらどうか。それこそ東京大学の卒業生の社外取締役は、さつき会(東大女子の卒業生の会)にでも赴いて、女性でも優秀な人材を探したらどうか。

社外取締役が執行役側のいいなりになっており、取締役会が「社外取締役も納得したという大義名分を与えるだけの存在」とまで雑誌記事で酷評されるようになっているのは悲しい。委員会設置会社になった2003年以降に特に株価が低迷している。社外取締役は名誉職ではなく、企業価値の上昇のための相当の時間と労力を使って、時には頭脳労働をして、株主価値の増加に真剣になるべきで、他社の最高経営責任者を務める人物が6社も社外役員のポストを兼任し、かつ公益法人のポストを20も兼任したりすることに違和感を覚えるのは小生だけでなく、株主総会当日の質疑でも、若い女性など同世代の複数の株主から同じような疑問が投げかけられていた。当社は80年代までの技術研究開発成果により、日本経済が低迷する90年代に株価が4倍になるなど世界でも有数の高資本効率の材料科学メーカーとなることができた。半導体や液晶パネルの製造に使われるフォトマスクやマスクブランクス、HDD用ガラス基板の事業はほぼ独占ないし寡占であり、高い利益率を誇った。それが2000年代になると、買収失敗や10年間まったく研究開発成果がないことにより、株価が低迷している。高齢化社会の進展により眼科領域は世界的にも高い市場成長率を持っているが、眼内レンズという商品を持っているのに、まったく生かし切れていない。集中と選択により、材料科学と眼科というもともとの事業領域に戻って、今後の戦略を練っていくべきだと考えている。技術開発の失敗の痛手は、日本経済の失われた10年と重なるかのようである。

2010年から独立性のない監査役候補者や委員会設置会社の社外取締役候補者に反対を推奨する議決権行使助言会社のポリシーと相まって、社外役員の独立性が注目されているが、株価のアップサイドを支えるのにおそらく一番重要なことは、取締役個人の利益を株主の利益になるべく一致させるインセンティブ構造を設計することだ。HOYAの例をとってみても、社外取締役は取締役報酬と比べて一部の株式保有しかしておらず、株価を上げるインセンティブに乏しく、それより最高執行役らと仲良くして取締役としての再任を狙うという行動原理をとっていることは明らかだ。米国企業では、取締役は一定の株式を継続的に取得していくことが求められていることが多いし、当社が最も成長した90年代には小生の伯父である会長が他の取締役に個人保証をして積極的に株を買わせていた。日本企業の問題の一つは、経営陣や取締役の自社株保有が少ないこと、株価が下がっても懐はほとんど痛まないので、エイジェンシー・コストが多大に発生しているという問題だ。

実際にアメリカの大リーグの監督はシーズン途中での解任もあるし、競争メカニズムが働いていると解釈できるが、日本で経営トップの解任はほとんどない。本来あるべき競争原理が十分に働いていないことを示している。ただし近年になってオリンパスや日本板硝子、日産自動車など、日本企業でも外国人の経営トップが出てくるようになってきたことは注目してよい。ERISA法が重要なのは、年金受託者となった運用者に株主のための議決権行使を実質義務付ける効果があるからである。なおどこまでが法整備が必要で、どこまでが大臣命令(本ケースでは厚生労働大臣)による省令で可能かは、仲間内でも議論がある。2010年のHOYAの総会での事例でも、米国の機関投資家はERISA法によって議決権行使を義務付けられているので、企業統治を改善することで中長期的株主価値を増加させると見込まれる定款変更議案には賛成票を投じる傾向にあった。一方日本の投資信託などでも近年は受託者責任が強調されているので、議決権行使ガイドラインに従って議決権行使を行うようになってきているが、日本の大手銀行の政策保有株式や企業間の持ち合い株、相互会社となっている生命保険会社や農林系金融機関については、まだまだ遅れているというのが実情だ。日本版ERISA法は、これら課題を一気に改善する可能性のある資本市場のウルトラCであることを、政策担当者になるべく伝えたい。社外取締役の候補者についても、株主価値を増大させる優秀な人材であれば高い給料を払っても株主からみれば何ら不満はないが、無能でやる気のない候補者には、その過去のパフォーマンスに基づいて反対票を投じることもあってしかるべきだ。11年前に米アップルに投資していれば、株価は20倍だ。日本版ERISA法は、健全な競争原理により、日本の上場企業にスティーブ・ジョブズのようなスーパー経営者を一人でも増やすための改革である。

2011年5月5日木曜日

サンテック株主提案

サンテック株式216,000株を保有する株主2名が、同社に対して、以下の株主提案を行った模様あり、世襲の場合の情報開示の議案も提出されました。

1 株主提案の内容(議案の要領)

(1) 第64期利益処分案承認の件

第64期の利益処分案として、1株につき20円の配当を行う。

(2) 自己株式消却及びそれに伴うその他の剰余金の処分の件

保有する自己株式のうち、200万株を消却する。これに伴い、別途積立金を1,000百万円減少させ、繰越利益剰余金を1,000百万円増加させるその他の剰余金の処分を行う。

(3) 取締役2名解任の件

取締役八幡欣也及び取締役八幡信孝を解任する。

(4) 定款一部変更の件(取締役社長の世襲に関する情報の開示義務)

「取締役会が、過去2代に翻って取締役社長を務めた人物の2親等内の親族を取締役社長に選任する場合には、世襲の潜在的批判があるにも拘らず、特にその人物が取締役社長に最適であると判断した理由を株主に開示しなければならない。」という条項を、定款に規定する。

(5) 定款一部変更の件(株主提案権行使の適時開示義務)

「株主総会に向けて株主提案権が行使された場合は、行使されてから1週間以内に株主提案権行使の事実を株主に開示しなければならない。」という条項を、定款に規定する。

(6) 定款一部変更の件(白票を会社側提案については賛成、株主提案については反対とすることの禁止)

「株主総会の議決権行使書面において賛成とも反対とも記載されていない白票については、会社側提案と株主提案で不公平な取り扱いをしてはならない。」という条項を、定款に規定する。



2 提案理由

議案(1)について

当社は、長年に渡り(第53期以降)1株当りの配当額を毎年10円に据え置き続けてきました。第60期・第61期には、各々12円・13円に増配したものの、そのうちの各々2円・3円分は特別配当・記念配当の扱いで、第62期には再度10円に減配しています。普通配当を10円にする事に拘っているとしか思えませんが、この10円という配当金額には、合理的な根拠は皆無であり、「安定配当」の名の下に、長年続けているから、という理由だけでこの配当金額が継続されてきたものと言えます。実際に、株主総会の場でも、あるいは前期までの株主総会参考書類に記載された株主提案に対する取締役会の反対意見に於いても、ただの一度も10円配当に拘泥する定量的な理由が説明された事はありません。
一方、当社の連結ベース(以下、数値は全て連結ベースです。)の1株当り株主資本(評価・換算差額等を含む、以下同じ)は、第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点で1,319.58円あるのに対して、市場に於ける株価はこの水準の約1/4という驚くべき低水準にあります。
1株当りの株主資本は、会社の「解散価値」と言えるものです。最悪期は脱したとは言え長引く株式市場の低迷により、1株当りの株主資本を株価が下回っている企業自体は多数あるものの、株価がこの水準の約1/4程度まで低迷している当社のようなケースは、信用不安のある企業、バランスシートに多額の含み損を抱えていると思われる企業(一部の不動産関連企業など)を除けば稀であり、極めて異常な状態です。
当社が、バランスシートに含み損を抱えていたり信用不安がある訳でもないのに、このような異常な低株価に喘いでいる原因としては、当社が、株主から運用を付託された株主資本を有効に活用し、期待される利益を計上する事が出来ていない状態が長年に渡り続いているにもかかわらず、経営陣にこの状態を改善する意思と能力が無いことを市場が察知しているためであると思われます。
一般的な前提に基づき当社の株主資本コストを試算すると、約6%程度であると思われます。3年前の第61回定時株主総会において、当社社長も同内容の答弁を行っています。株主資本コストとは、会社が株主資本を最低この利回りで運用しないと、株主資本の拠出者である株主が損害を被っている、と看做される利回りと言えます。長年に渡り、当社の当期利益の水準は、この株主資本コストを満たす水準(17.5億円程度)を大きく下回り続けており、第64期(平成23年3月期)の会社予想においても同様です。これは、株主資本が過剰であることが原因です。
一方、当社は、第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点において、現預金だけでも112億81百万円保有しています。現預金に有価証券9億99百万円、投資有価証券31億45百万円を加えた広義の現金等価物は154億25百万円にも上り、これは株主資本の約55%に相当します。これに加えて、本業とは無関係な投資用の不動産も36億73百万円保有しています。それに対して有利子負債は、短期借入金が3億64百万円存在するのみであり、極めて安定的な財務状況にあると言えます。また、配当原資である利益剰余金も、258億68百万円と膨大です。
当社の業態は、多額の設備投資を必要としない電気工事業であり、現金性の資産を過剰に保有する必然性は極めて低いものと考えられます。
当社取締役会は、第60期の株主提案に対する反対意見の中で、「設備工事業界は(略)工事施工に際して瑕疵担保責任も有しており(略)自己資本の厚さや不測の出費をまかなうだけの手許資金の余裕が極めて重要」であることを増配に反対する理由の1つにあげていますが、単体ベースの完成工事補償引当金は僅か2,100万円に過ぎません(単体ベースの最新のデータである平成22年3月末時点)。広義の現金等価物を154億円も溜め込みながら増配を拒む理由としては、あまりにも荒唐無稽です。しかも、手許に保持すべき資金の具体的な金額についての説明は、株主総会において何度説明を求めても、全くなされていません。また、手元資金の余裕が重要だと言いながら、直ぐには現金化できない投資不動産に多額の投資を行っているのも、矛盾していますし、わざわざ手数料を払って57億円ものコミットメントライン契約を毎年更新し続けている(最新更新日平成23年2月22日)意味がありません。
とは言え、我々提案者は、一部のいわゆる「ハゲタカファンド」のように、保有する現預金を全て株主に還元すべきである、などという極端な主張をするつもりは毛頭ありません。
当社の第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点に於ける自己株式を除いた発行済株式数は2,142万3,000株ですから、1株当り20円の配当を行っても、配当金総額は僅か4億2,846万円に過ぎません。当社が第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点で保有する現預金だけでも、この26倍強ありますし、同じく広義の現金等価物は、この36倍あります。利益剰余金は、この60倍強あります。1株当り20円の配当を行っても当社の財務状況には何らの問題も生じ得ないことは明らかですし、この配当金額は、毎年継続して配当可能な金額であることも明らかです。
株主資本配当率という指標が近年大きな注目を集めており、大手企業などを中心に、株主資本配当率に基づき、配当金額の下限を定める企業が増えてきています。
これは、株主から運用を付託された株主資本に対して、最低でも、ある一定の利回りで配当を行う、という考え方です。会社が高成長の段階にあり、資金需要が豊富な企業には、この考え方は必ずしも最適とは言えませんが、当社は、売上も安定的であり、そのような企業に分類されるとは考えられません。業績の高成長を望めない企業は、株主資本配当率で最低の配当金額を決めるのが妥当だと思われます。
1株あたり20円の配当は、株主資本配当率僅か1.49%の水準に過ぎません。株主は、株価下落リスクを引き受けて投資を行っている訳であり、少なくともリスクの無い国債・社債等の利回りよりも高い株主資本配当率があって然るべきです。会社側の配当予想の10円では、株主資本配当率は僅か0.74%に過ぎず、あまりにも低過ぎます。
なお、従来、株主総会に於いて、社長の八幡氏は、配当金額を上げない理由として、「当期利益を上回る配当はしない主義だ」という趣旨の事を繰り返し述べていましたが、我々提案者は、上述の理由から、この考え方自体が、当社の様に、既に成長段階にはなく、過剰に株主資本を貯め込んでいる上場企業には適切では無いと考えております。また、現実には、1株当たり当期利益が1.60円だった第61期に13円の配当を行い、同じく15.07円だった第62期に10円の配当しか行わないなど、会社自身がこの意味不明な「当期利益ルール」に縛られていない事は明らかです。
また、取締役会が、当株主提案に対する反対理由として、以前リーマンショックを口実にした様に、今回の東北大震災を引き合いに出してくる可能性があるので、事前に釘を差しておくと、前述の様に、当社は多額の設備投資を必要としない電気工事業です。実際、第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点に於ける土地を除く固定資産の残高は17億59百万円に過ぎず、前述した当社の株主資本、現預金等に比べ僅かな金額に過ぎません。これらの設備は一箇所に集中して所在する訳でもなく、当社にとって大震災のリスクは僅少です。実際に、当社の株価は、震災前の3月9日終値が287円だったのに対して、復興需要期待もあってか、4月26日時点では334円と上昇しているくらいです。これらの事実からは、大震災リスクは僅かな金額の増配を拒む事由には成り得ません。
以上の理由から、1株当たり20円の配当を提案いたします。

議案(2)について

当社は、第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点において、発行済株式の10.0%に相当する238万2000株の自己株式を所有しています。当社は、「第64期利益処分案承認の件」(株主提案)の提案理由で詳細に説明したように、財務状況は磐石であり、過大な現預金、現金等価物を保有しています。また、当社の業態は、多額の設備投資を必要としない電気工事業です。従って、株式市場から資金を調達する必要性は、予見できる将来において極めて乏しいと思われます。
自己株式を保有していると、取締役会の決議だけで自己株式を処分される恐れがあります。現状のように、当社の株価が1株当り株主資本を大きく下回る状況下で、時価で自己株式を処分されると、割当先がどこであれ、処分方法が公募であれ第三者割当であれ、1株当り株主資本が減少し、また1株当り利益が希薄化し、株主共通の利益が大きく毀損されます。
当社取締役会は、第62期の株主提案に対する反対理由の中で、「現行法上自己株式の処分は、会社成立後の株式の発行と基本的に同様の規制に服しており、仮に自己株式を消却しても、自己株式の処分と基本的に同じ手続を通じて、株式を発行することができる」から、自己株式の消却をしても意味がないと主張していますが、では、何故多くの企業が自己株式の消却を発表すると市場に好感され、株価が大幅に上昇するのでしょうか?我々提案者は、自己株式を消却する行為を、株式の希薄化を防ごうとする会社側のコミットメントと市場が受け止めるので、このような現象が起きるのだと理解しています。確かに、自己株式の処分も新株の発行も取締役会決議で可能ではありますが、新株発行の方が自己株式の処分に比べてより「大義名分」を求められ、実行のハードルが高い、というコンセンサスがある訳であり、自己株式を消却する事に実際上意義がある事は明らかです。
また、自己株式の処分と基本的に同じ手続を通じて株式を発行出来るのであれば、何故、会社側は自己株式の消却に反対するのでしょうか?万が一、どうしてもエクイティ・ファイナンスを行わなければいけないような危機的な状況が生じた場合は、それこそ新株発行をすればいいのであり、発行済株式の1割もの大量の自己株式を所有し続け、消却に反対する論理的な理由は皆無です。
会社側は、M&Aに必要であるといった反論をするかもしれませんが、M&Aを行う際には過大に保有している現預金・有価証券を用いればよいのであり、自己株式を用いる必然性は全くありません。現実的に使い道がない自己株式を消却し、将来的な株式価値の希薄化の可能性を減らすことは、既存株主全ての利益に適うことであり、238万株余の自己株式のうち、200万株の消却を提案いたします。
なお、自己株式の消却に伴い、会計上、繰越利益剰余金が減少することになります。第64期(平成23年3月期)第3四半期末時点で自己株式の帳簿上の価格は9億49百万円ですので、必要な会計上の手当てとして、245億円ある別途積立金を10億円減少させ、繰越利益剰余金を10億円増加させる、その他の剰余金の処分を行うことを併せて提案いたします。

議案(3)について

八幡欣也氏の解任について

現在、社長の八幡欣也氏は、昭和38年以来47年の長きに渡って当社の取締役を務めており、また、昭和61年に当社社長に就任以来24年の長きに渡って当社社長を続けています。どちらも、上場企業としては極めて異例です。
取締役に定年を設けるべきという昨年の株主提案に対する取締役会の反対理由の中に、「取締役候補者は、経歴、経験、人柄、能力、年齢等を総合的に判断してその都度決定し、株主総会に推薦しております」という記述がありましたが、この異例の長期在任や、長男の八幡信孝氏への世襲を企図していることから分かるように、客観的に見ればそのような事は行われておらず、八幡家が当社を私物化していることは明らかでしょう。
また、会社と利害関係の無い立場から、株主に代わって会社の運営を監督する役割が求められる社外取締役が、未だに当社には1名もおりません。当社は上場企業であるにも拘らず、資本コストや株主利益を考慮した経営が行われているとは言い難く、こうした経営の結果、株価も「解散価値」である1株当り株主資本の約1/4という極度の低迷を続けており、株主共同の利益の観点からも、また、上場企業としてのコーポレートガバナンスの観点からも問題が山積しております。これは、八幡欣也氏が、サンテックが八幡家のものである、といった誤った認識を持っている事にも原因があると思われます。
更に、株主総会に於ける答弁や、株主総会招集通知に於ける取締役会の意見の中では、八幡欣也氏の行為には問題がないという強弁が度々なされていますが、以下の客観的な事実が存在します。
まず、第61期中の関連当事者との取引として、株式会社共立ハウジング(以下、共立ハウジング)への資金の貸付が行われました。共立ハウジングは、八幡欣也氏が代表取締役を務める八幡家のファミリー企業ですが、当社の関連会社ではありません。つまり、この会社に対して、当社が好条件の取引を行う必然性も利益を供与する必然性も全くありませんでした。
共立ハウジングの財務情報は入手できませんが、(株主提案者は)経営状態は芳しくないと仄聞しています。そのような会社に、当社が1億5,000万を貸付ける必然性は全くありませんでした。仮に、経営状態に問題が無い企業なのであれば、金融機関から資金を借り入れればよいだけの話です。3年前の第61回定時株主総会に於ける八幡欣也氏の答弁で判明したのは、この共立ハウジングに対する貸付けの際の利率が、短期プライムレートだったという事実でした。
上場企業である当社にとって、当社の関連会社でもない会社で、かつ、代表取締役である八幡氏のファミリー企業に対して貸付けを行うようなことは、利益相反取引であり、行うべきではなかった事は言うまでもありません。また、短期プライムレートのような低金利での借り入れができるような企業ではない共立ハウジングに対して、短期プライムレートで貸付を行うことは、利子の差額分を利益供与したのと同じです。最終的に貸付金が返済されたから問題は無かった、という話では全くありません。
第61回定時株主総会に於いて、八幡欣也氏は、担保を取っていたこと、取引が取締役会で了承されたことを理由に問題が無い旨を述べました。また、貸付けた理由としては、取引先だから、と説明しました。しかし、共立ハウジングは、その担保を当社ではなく金融機関に差し出して貸付を受ければ良かった筈で、それが出来なかったために当社を頼ったのであれば、担保に問題があった可能性があります。また、このような利益相反取引を取締役会が了承した事は、当社のコーポレートガバナンスが機能していないことの証ではあっても、八幡氏の責任を減じるものではありません。
既に、第58回定時株主総会に於いて、株主(株主提案者ではない)から、共立ハウジングの業績が良くないようだが、サンテックから資金援助を行う恐れは無いのか?という質問がなされていました。この質問に対して八幡欣也氏は、そのようなことは行うつもりは無い、と明確に否定していました。この2年以上後に行われた共立ハウジングへの貸付けは、第58回定時株主総会における八幡氏の答弁の内容と異なるものであり、同氏は、株主総会において虚偽答弁を行ったことは、否定しようがありません。
株主総会に於ける虚偽答弁という事に関して言えば、昨年の株主総会に於いても、八幡欣也氏は、平成22年度から開始する第9次中期経営計画の数値目標を早期に開示する旨の答弁をしていたのにも拘らず、平成23年4月現在、未だに何らの開示も行われていません。
また、株主提案者は、ここ数年の株主総会の度に、海外工事に付随するリスクを管理する体制を整備すべきだという提言を何度となく行って来ましたが、その度に、八幡欣也氏は、対策を行っている旨の答弁を繰り返してきました。しかし、当期(第64期)に於いても、第3四半期末時点で既に3億54百万円の為替差損を計上するに至っています。第63期には、海外工事の売上債権に関する貸倒引当金繰入で9億83百万円、海外子会社に関する債務保証損失引当金繰入で1億99百万円の損失を出しており、第62期には2億73百万円の為替差損を出しています。日本市場の縮小に鑑みれば、当社としても海外工事に活路を見出さなければならない情勢であると思われますが、八幡欣也氏が、経営トップとしてこういった情勢に全く対応出来ていない事は明らかです。
このように、長年の経営不振や、社外取締役をおかずに世襲を企図している事に象徴されるコーポレートガバナンスの欠如に加えて、ファミリー企業との利益相反取引や、株主総会に於ける虚偽答弁などを鑑みれば、八幡欣也氏には、上場企業である当社の取締役としての適格性が著しく欠けていると判断せざるを得ません。
よって、八幡欣也氏の取締役解任を提案いたします。
なお、会社側は、昨年の株主総会で八幡欣也氏が選任されていることをもって、解任すべきではないと主張するかもしれませんが、上記の通り、昨年の株主総会以降にも解任に相当する事由は存在している訳であり、改めて同氏の取締役としての適格性を株主総会に諮るべきであると考えます。

・ 八幡信孝氏の解任について

八幡信孝氏は、上記の通り社長の八幡欣也氏の長男です。平成9年10月に当社に入社後、僅か6年半後の平成16年6月に29歳の若さで当社の取締役に就任しており、明らかに特別扱いの人事が行われております。同氏が特別の業績を残している形跡は全くありません。世襲を目論んだ人事であることは明らかです。
仮に世襲を企図しているとしても、同氏が若くしてその重責をこなしているのであれば、同氏に関する人事を株主が許容する余地が無いとは言えません。しかし、現実は異なります。
平成16年6月に、当社は、学校法人東北文化学園・学校法人友愛学園に対する総額4億82百万円(学校債3億円、リース債権1億82百万円)の債権が貸し倒れになる被害に遭いました。この件について、会社は同学園の会計監査人を訴えておりましたが、平成20年に当社の敗訴が決定し、損害賠償を得ることは出来ませんでした。つまり、この4億82百万円の損害の責任は、当社の当時の責任者にある訳です。
八幡信孝氏は、平成14年6月に執行役員に就任して後、管理本部を担当しており、この東北文化学園・友愛学園に対する貸し倒れ事件の責任者といえます。同氏は、この巨額貸し倒れ事件の経営責任を全く取っていません。
また、当社は第63期に於いて、海外工事に関する貸倒引当金の繰入として9億83百万円及び海外子会社に関する債務保証損失引当金の繰入として1億99百万円の合計11億82百万円を、特別損失に計上しました。巨額の貸倒れ損失が発生した訳ですから、昨年の株主総会に於いて株主提案者は、損失の詳細についての情報開示を求めましたが、会社側は、資材価格の高騰が招いた出来事だと言うばかりで、事件が未解決であることを理由に一切の情報開示を拒みました。事件の解決後には情報を開示するとの答弁がありましたが、未だに何の情報開示も為されていません。
上場企業として早期の情報開示が待たれますが、いずれにしても、当社の規模に比べて貸倒れ損失の額があまりにも巨額であり、常識的に考えて、担当役員は、管理能力不足或いは、社内体制の整備を怠ったといった事を含む広い意味での過失(刑事、民事上の業務上過失の意味ではありません)に対する経営責任は免れないと言えます。海外工事に関する債権管理のまずさから起因した巨額損失ですから、担当取締役は管理本部長の八幡信孝氏、海外本部長の槇岡敍治氏が該当すると考えるのが自然でしょう。
会社側は、原因は資材価格の高騰だと昨年の株主総会でも強弁しましたが、海外工事を行っている全ての電気工事会社が巨額の貸倒れ損失を計上した訳ではなく、当社の内部管理体制に問題があった事は明らかです。
 この件では、昨年4月28日付の会社側発表によれば、取締役の責任の取り方としては、全取締役が2ヶ月間月額報酬を僅か20%返上するだけ、という驚くべきものでした。
経常利益額の2倍以上の巨額の損失を出したのにも拘らず、担当役員の個別の経営責任は一切問わず、全取締役が僅かばかりの報酬を返上する事で問題を済ませてしまおうとする当社の姿勢は、上場企業としてのコーポレートガバナンスが欠如しています。
最近の当社の歴史の中で、2大巨額損失事件と言える東北文化学園・友愛学園に対する貸し倒れ事件、及び海外工事に関する貸倒れ事件のいずれに於いても、八幡信孝氏が担当役員であった事は紛れもない事実です。その損失総額は、16億64百万円です。東北文化学園・友愛学園に対する貸倒れ事件から、八幡信孝氏が何も学んでいなかったのではないかと思わざるを得ません。
これら一連の出来事は、社長の八幡欣也氏が長男の八幡信孝氏への世襲を企図して、管理能力・経験不足なのにも拘わらず同氏を重用し続けている為に起こった(株主にとっての)悲劇だと考えざるを得ません。
また、同氏はIR担当役員でもありますが、株主総会で何度要請しても決算説明会を開催しようとはしていません。また、当社の極度の株価の低迷は、市場関係者に対するIR不足もその要因の一部であると思われることから、IR担当役員として、機関投資家や証券会社のアナリスト等とのミーティングに立ち会った回数を株主総会で質問しても、同氏は、答えることが出来ませんでした。複数回の株主総会に於いて何度質問しても答えようとしないのですから、その意味不明な態度は理解の範疇を超えています。これは、自らの重要な職務の状況についての記憶さえ曖昧であるのか、一度もその様な事は行っていないのかのどちらかしか考えられず、いずれにしても上場企業の取締役の資質に欠けているとしか思えません。
このように、実績、資質の両面において、八幡信孝氏は、当社の取締役として適格性に欠けることは明らかです。仮に、当社の大株主でもある八幡一族が同氏への世襲を企図しているとしても、一度取締役を辞して、一社員として研鑽を積み、実績・資質の両面で取締役としての適格性を得てから、再度株主に対して同氏の取締役への選任を諮るのが、上場企業としての当社のあるべき姿でしょう。
よって、八幡信孝氏の取締役解任を提案いたします。
なお、会社側は、昨年の株主総会で八幡信孝氏が選任されていることをもって、解任すべきではないと主張するかもしれませんが、上記の通り、昨年の株主総会に出席していない株主にとっては、昨年の株主総会当日に於ける海外工事に関する巨額損失事件に関する会社側の説明等を知る立場にない訳であり、それも踏まえて、改めて同氏の取締役としての適格性を株主が判断する機会を持つべきであると考えます。

議案(4)について

現在、取締役社長の八幡欣也氏は、昭和61年に当社社長に就任以来23年の長きに渡って当社社長を続けています。これ程長期の社長在任は、上場企業としては極めて異例で、他に同様の事例は数える程しかないものと思われます。
また、その前任者は八幡欣也氏の実父の八幡貞一氏でした。
さらに、何らの実績もなく、当社に巨額の損害を与えた事件(事故)の際の責任者を歴任しているにも拘らず、異例の若さでの抜擢人事が行われている事実等に鑑みれば、八幡欣也氏は、同氏の子息である八幡信孝氏への取締役社長職の世襲を企図している事は明らかです。
この様に、当社は上場企業であるにも拘らず、世襲ありきの人事が断行され、コーポレート・ガバナンスが全く機能していません。その結果として、資本コストを無視し、株主利益を一顧だにしない企業経営が続けられ、超長期に渡る株価の低迷に象徴される株主価値の大幅な毀損が続いています。
このように、株主価値とは全く無縁の人事が執り行なわれ、取締役会も監査役会もそれを牽制する機能を全く果たしていないので、少なくとも取締役社長の世襲に関して、その合理性についての株主への説明責任を強化する条項を定款に設けることには、一定の合理性があると思われます。

議案(5)について

提案者は、ここ数年、毎年株主提案権の行使を行っていますが、会社は株主提案権が行使された事に関して一切の適時開示をせず、その結果、株主は、株主総会招集通知が送られて来て初めて、株主提案権が行使されている事、及びその内容を知るという事態になっています。多くの会社(例えば、本年株主提案権が行使されているシャルレやサンシティー)では、株主提案権の行使が行われた時点で、適時開示を行っています。株主提案権の行使は、株主間のコミュニケーションや、株主と取締役のコミュニケーションを行うという意味で有用であるという立法趣旨が従来から存在し、上場企業の情報開示を強化する傾向からしても、今までの当社の対応は問題があったと言わざるを得ず、取締役会にとって都合の悪い事実を隠蔽しようとする当社の体質には、懸念を抱かざるを得ません。株主提案権行使の事実について適時開示をする事で、当社株主共同の利益を損なう事などは有り得ませんので、株主提案権行使が行われた場合、その事実の適時開示を行う様義務付けるべきです。

議案(6)について

当社の株主総会に於いては、賛成とも反対とも記載されていない議決権行使書面に関しては、株主提案について反対、会社提案について賛成とする取り扱いが行われていますが、これらは議案の決議方法として不公正だとする見解が存在します。実際に、提案者が議決権行使書面を閲覧したところ、毎年かなりの白票が現実に存在します。殊に、一般の株主にとって重要度の高い配当に関する議案に関しては、会社提案と株主提案が対立議案として扱われており、会社提案に関しては賛にも否にも○をつけずに、株主提案に関しては賛に○をつけている議決権行使書面の場合でも、会社提案に何も印をつけない事が会社提案に対する賛成として扱われ、会社提案にも、そしてその対立議案である株主提案についてもともに賛成をしているという事で、両議案に関して棄権扱いにされています。これは極めて不合理な扱いであると言えます。会社側は、「賛否の表示がない場合、会社提案については賛成、株主提案については反対の取り扱いをする」旨の注意書きが議決権行使書面に記載してあるのだから、構わないと言うかもしれませんが、現に、配当に関する株主提案には賛に○をつけ、会社提案には何も印をつけない人も多数存在しています。その様な株主の意図する所は明らか(株主提案の配当案に賛成)だと思いますが、会社側に著しく有利である不公正な取り扱いに関する注意書きを見落としてしまったが為に、棄権扱いになってしまっているのです。この様な、株主の本来の意図とは異なる取り扱いを避ける為にも、賛否どちらにも○がつけられていない議決権行使書面に関しては、会社提案、株主提案を問わず、その議案に関しては棄権扱いとする事が正当であろうと考えられます。