2012年1月27日金曜日

大谷禎男弁護士(元東京地裁民事8部統括判事)は適切な対応を

さる1月12日午前10時より、東京地裁民事8部の601号法廷で、小生が原告である決議取消訴訟の第4回口頭弁論(被告:HOYA株式会社)が開かれました。
ちなみに裁判長は福井章代裁判長、合議のためあと2人の佐藤隆幸、川勝庸史の各裁判官が担当しています。川勝庸史裁判官は、以前の株主提案を一方的に削除する会社側の一方的な通告書が送られてきた際の保全事件も担当しています。
前回までに被告から提出されている株主総会当日の反訳書に改竄があるという主張に、さすがの裁判官たちも驚いたのか、この日で弁論が終結する予定であったのに、結審はせずに、3月15日に改めて期日が入るという結果になりました。

被告側の弁護士は、当日姿を現さない松尾眞弁護士以外には、泰田啓太(元検事、元法務省民事局)、鈴木毅、脇田未菜子(元判事補)の3氏(桃尾松尾難波法律事務所)ですが、さすがに改竄のある反訳書を提出することは、弁護士としての最低限のルールに反すると言わざるを得ないと思います。
しかもかかる被告の代理人は、平成22年度定時株主総会を巡る決議取消請求事件でも、挙手している発言者がいるのに<挙手なし>などと表示するなど、同じように改竄のある反訳書を提出していますので、これで2回目です。
ここまでくると、弁護士としてあるまじき非行だと言わざるを得ません。

実は桃尾松尾難波法律事務所には、大谷禎男氏という東京地裁民事8部の統括判事を務めた経験を持ついわいるヤメ判の弁護士が、カウンシルとして所属しています。自分の経歴がかかる違法性のある同僚弁護士の拍づけに利用されている側面があるのですが、さすがにかかる問題のある行動が野放図に放置されている現状に対し、一定の行動をとるべきだと思います。もし大谷氏に微塵もの良心があるのであればですが。

なお松尾眞弁護士には、かかる違法行為の連発に対し、すでに第一東京弁護士会に懲戒請求をしています。

2012年1月6日金曜日

大塚和成弁護士が、HOYA株主総会決議取消訴訟の地裁判決を正当に批判

レックス事件の株主側の代理人等を務めた大塚和成弁護士が、小生が原告として敗訴したHOYA株式会社株主総会決議取消請求訴訟の地裁判決(大門匡裁判長)を批判する記事(「否決の決議と株主総会決議取消しの訴え」(HOYA株主総会決議取消請求事件)「銀行法務21 No.734」2011年9月号)を書いています。

少し長くなりますが、大塚論文の本論ではないが、重要な一部を引用します。
「会社が株主提案を拒否しても、可決された議案と議題が異なれば、当該可決決議の取消原因とはならないとも判示している。そこで、株主提案が無視された場合、当該株主提案と議題を同じくする会社提案がなされなければ、当該株主は、株主総会決議取消しの訴えを提起することができない。そうすると、会社が適法な株主提案を無視し続けても、提案株主が株主総会の招集請求権(会社法297条)や取締役解任の訴え(同法854条)が定める議決権数を保有していなければ、司法的救済の途が閉ざされるとの問題が生じる。この場合、株主に残された手段としては、名目的慰謝料として1円の支払いを求めて取締役及び会社に対して損害賠償請求をすることくらいであろうか。」

以上にあるように、HOYA株式会社の最高執行役の鈴木洋や経営幹部の中川知子は、株主提案の議題を一方的に削除しても、会社提案の取消事由にならないという地裁判決を悪用することを思いついたようで、次の年の株主総会前の4月には小生の株主提案の大半を一方的に削除することを通知する文書を送り付けてきました。係る行為は違法行為であり、決して許すべきではありません。もし株主提案の議題を削除しても会社提案の取消にならないというのであれば、橋下徹大阪市長による関西電力への株主提案も、関西電力が拒否して決議すればいいということになっています。

なお以上の地裁判決は、あまりに問題があるということで、高裁で一部修正されています。高裁はまた、事実関係のあてはめがおかしいのですが。
この地裁の大問題の判決文を書いたのは、大門匡、秋吉信彦、岡部弘の3名の裁判官(東京地裁民事8部)です。現在本事件は最高裁に上告しています。

2011年8月7日日曜日

HOYA株式会社の株主提案の成果

HOYA株式会社の株主提案の成果

2009年 丹治宏彰氏の解任議案の提出(株主総会前に丹治宏彰氏は技術担当者から退任した)
2010年 15議案の株主提案(決議取消を東京高等裁判所で係争中)
2011年 20議案の株主提案(決議取消を東京地方裁判所で係争中)

2009年株主提案の成果
10年近くの間、研究開発にまったく成果のなかった丹治宏彰氏の最高技術責任者からの交代(なお丹治宏彰氏はその後1年間だけ企画担当執行役と横滑りし、2010年6月18日に執行役からも退任)。なお会社は一方的に不記載とする文書を送付してきた。

2010年株主提案の成果
株主提案の説明文字数増加の議案の実質化(2010年8月に株式取扱規則の改定により形式上は実現。ただし会社側は一方的に説明理由の削除等を行っている)
執行役を交えない経営会議をやっていると表明している(2011年6月の株主総会参考資料)

2011年株主総会での成果
年齢が40代の取締役候補も含む取締役候補者の選任を表明せざるを得なくなったこと
社外取締役の再任回数9回までの制限の明確化(議長答弁を引き出すことに成功)
取締役会仲良しクラブ化の象徴である椎名武雄氏の退任(2011年6月21日株主総会で実現)

その他全体的な成果
個人による株主提案がポジティブに社会的に評価されるようになったこと(2011年6月のみずほFGに対する株主提案が、国内の投資家からも高い支持を集めるようになった。東京電力の株主総会の社会問題化)
委員会設置会社の企業統治の問題点の指摘
投資家による議決権行使の問題が注目されるようになり、国会(衆議院財政金融委員会)でも取り上げられるようになったこと

2011年7月23日土曜日

日本版ERISA法制定の必要性と議決権行使について

以下、日本版ERISA法(従業員退職所得保障法)の概略を提示します。なお本件に関して助言を受けたい政策担当者(当然ながら衆参の国会議員も含む)は、ぜひ小生の電子メール(yy2248[at]columbia.edu [at]を@に変えてください)まで、ご遠慮なくご連絡ください。

     日本版ERISA法制定の必要性と議決権行使について

国民の最大の政治的関心事は、年金問題である。日本人の年金資産のかなりの部分が日本株等で運用されていることを考慮すると、労働者・年金受給者の受益権の保護を明文化し、資本市場の効率化を行う政策を採用することが、極めて重要である。

また、年金受託者(運用会社等)に対して、受益者の利益になるための株主総会での議決権行使を義務付けることが重要だと考える。日本の富を増やす構造改革のための、社会的なインフラ整備の一環である。

1. 現状

大前提として、日本の株式市場は、過去10年間あるいは20年間で、先進国中最低のパフォーマンスを記録しているという事実が存在する。年金の少なからぬ部分が日本株で運用されている現実を考えると、日本の株式市場(=資本市場)を活性化することは、日本人の年金資産を守り増やすために、非常に重要なことである。このため、日本の株式市場に於いて、経営者や取締役が株主の利益を考慮して行動する様な規律を導入することが、決定的に重要である。
しかしながら、米国に於いては、後述のように、年金資産の運用に於いて、その保有株式の議決権行使のガイドラインが受託者責任の観点から厳格に定められているのに対して、日本に於いては、法令上の規定は存在しない。

2. 日本版ERISA法の制定

従って、日本版ERISA法を制定する必要がある。
内容は、米国版ERISA法(後述)と同様なものが望ましいが、日本に特有の問題として、生命保険会社の一般勘定の存在がある。一般勘定資産も、その運用成果次第で保険契約者の受取る配当が異なってくるという点に於いては、年金資産と同様な性格を持つと言える。しかしながら、現実には、一般勘定の資産を用いて生命保険会社が行っている株式投資に於いては、生命保険会社はそれらの株式を基本的には政策投資として扱っており、契約者の利益は無視されているのが実情である。従って、日本版ERISA法の制定に際しては、生命保険会社の一般勘定もその対象に含めることが必要である。

3. ERISA法とは

米国で1974年に制定された従業員退職所得保証法(ERISA:Employee Retirement Income Security Act of 1974)の通称。企業の退職給付制度を包括的に規制する連邦法。
受給権の保護を最大の目的としている。具体的内容として、加入資格・受給権付与の基準、情報の開示、最低積立基準の設定、受託者責任の明確化と強化、制度終了保険などが導入された。

4. ERISA法で定める受託者責任について

ERISA法第404条に於いては、受託者の忠実義務を以下の様に定めている。

(1)(前略)受託者(fiduciary)はもっぱら加入員および受益者の利益のために以下のように、制度に関する義務を果たさなければならない。
(A)下記のみを目的とすること
(ⅰ)加入員および受益者に給付を行うこと
(ⅱ)制度管理のために合理的な経費を支出すること
(B)当該状況下で、同様の立場で行動し同様の事項に精通している思慮深い人(a prudent man)が同様の性格および目的を有する事業の運営にあたり行使するであろう注意、技量、思慮深さおよび勤勉さ(the care, skill, prudence, and diligence)を用いること。
(以下略)

5. 受託者責任と議決権行使の関係について

ERISA法で定める受託者の忠実義務に、年金資産で保有する株式の議決権を適正に行使することも含まれることが、1988年に化粧品大手エイボンの年金基金の受託者に対して米労働省から出された所謂「エイボン・レター」に於いて明確化された。エイボン・レターのポイントは以下の通りである。

①議決権行使と受託者責任との関係
・年金基金が保有する株式の議決権の行使は、受託者がなすべき資産運用行為に含まれる。
②議決権行使に関する権限と責任
・投資顧問会社等の運用機関に投資を委任した場合には、もっぱら運用機関議決権
行使の義務と責任を負う。
・ただし、基金規定に明記しておけば、指名受託者(基金規定で定められた責任者)が議決
権行使権限を留保できる。その場合には、指名受託者がその義務と責任を負う。
・指名受託者は投資顧問会社等の運用機関の議決権行使を監視しなければならない。労働省としては、行使、監視の各行為について、(手続きや基準の)文書化・記録の保存が必要と考える。
③議決権行使の基準
・受託者は、思慮深く、もっぱら加入者の利益ために議決権を行使しなければならない。
つまり、投資の価値に影響を与えるであろう要素を考慮して、加入者の退職所得に関する利益を無関係な事項に劣後させてはならない。

参考文献
『企業年金運営のためのエリサ法ガイド』石黒修一著 中央経済社2008年
『年金資産運用のためのエリサ法ガイド』石黒修一著 中央経済社2003年
『エリサ法の政治史 米国企業年金法の黎明期』ジェイムズ・A・ウーテン著 みずほ年金研究所

2011年7月13日水曜日

年金資産の受給権と企業統治の関係

私たちの年金資産の受給権と企業統治の改善には密接な関係があります。

というのも、日本人の年金資産の相当な部分は、日本株で運用されているので、日本株の運用効率を改善することには大きな国民益があり、それを実現するための手段が、企業統治の改善ということになります。
そして日本の機関投資家に議決権行使をもっとまじめにやらせるために、日本版ERISA法(そして日本版エイボンレター)が必要なのです。日本の機関投資家が、役所や経営者の方を向き、年金の受託者の方を向いていないことことが、大問題です。

実は法律を制定しなくても、議決権行使を受託者責任の一環に入れるには、厚生労働大臣の省令でも可能なのかもしれませんが、東京地裁民事8部の天下り体質を考えると、やはり明確に法律で規定しなくてはいけないと感じています。油断は禁物です。

そのための最大の障害は、中川知子氏?ということかもしれませんが、東京地裁民事8部の裁判官や、法務省民事局官僚の、企業法務を行っている事務所への天下りは、その一つの破壊するべき対象なのかもしれませんね。裁判官が裁判所の人事権を持っている方を向いて、判決をゆがめるようなことが公然と行われているような民事8部が、これからも放置されるとは思いません。

なお民主党政権による政権交代の成果について、内閣府令による上場企業における議決権行使結果の開示と報酬個別開示(ただし現状では年間1億円以上のみ)は、遅ればせながらでも積極的に評価するべきです。次は受託者責任を強化するためにも、日本版ERISA法(従業員退職所得保障法)の立法を実現するべきです。みずほFGの政策保有株式の議決権行使に係る株主提案が30%の支持を集めたことは、世の中の流れがそちらへ動いていることを示す一つの結果だと思います。

2011年6月24日金曜日

社外取締役の任期に関する成果:社外取締役の再任回数は原則9回と説明

先日の株主総会で、社外取締役の再任回数は原則が9回であると設定しているとの言質を取りました。小生が平成22年6月18日の総会で指摘している(もし詳細をご覧になりたい方は、東京地裁裁判所の決議取消訴訟の裁判記録をご覧になることをお勧めします)ように、ロンドンの証券取引所のルールでは、「取締役新任時から9年以上経過している場合」には原則として独立性がないと判断されるのですが、言論を持って企業統治を変えていくことができていることは、画期的だと思います。

再任回数の定義は若干不明ですが、就任した後9回再任されるとすると、10年で任期が終了するという意味なのでしょうか?
これに従えば、茂木友三郎は来年までに、河野栄子の再来年までには、原則に従えば、任期を迎えるはずですので、もしこの2人が退任すれば、今回退任していなくなる椎名武雄氏と合わせて、ペンタックス買収時の承認をした取締役は、過半数がいなくなることになります。ちなみに椎名武雄氏がなぜ16年の任期があったのか、不思議であります。椎名氏の存在自体が、取締役会が仲良しクラブ化していたということだと思います。

なお茂木友三郎氏に関しては、議決権行使助言会社3位のの日本プロキシガバナンス研究所(吉岡洋二所長)が去年も再任に反対していますし、議決権行使助言会社世界2位のグラスルイス社も今年は再任に反対しています。本来ならば、より若くて優秀な社外取締役を選任して、自らは身を引くべきでしょう。以前からいっているように、椎名武雄氏や茂木友三郎氏は、日本の社外取締役制度を形骸化させた罪を背負っています。早く自らの罪を認めて、謝罪してもらいたいものです。

昨年の総会で、多くの同世代の株主に、賛同の声を上げていただけたことが、変革の力になっていることを実感しています。発言すれば、変わることができるのですよ。本当にありがとうございました。

HOYA、社外取締役の再任は原則9回と説明=株主総会で 6月21日(火)15時20分配信 時事通信
 光学機器メーカー、HOYA<7741>は21日の株主総会で、議長の鈴木洋最高経営責任者(CEO)が社外取締役の任期について、「再任は原則9回」に制限していることを明らかにした。ただし、取締役全員の合意があれば、引き続き務めることができるとしている。
 今年で在任10年となる茂木友三郎取締役(キッコーマン会長)の再任については、議決権行使助言会社グラス・ルイスが反対意見を表明していた が、選任議案が可決された。
 総会の開催時間は2時間5分で、昨年より33分長かった。会社側が提案した取締役選任など2件は可決。一方、創業家の山中裕氏が提案した取締役 と執行役の報酬個別開示など、株主提案20件は全て否決された。(了)


<参考>(『委員会等設置会社ガイドブック』宍戸善一・広田真一編、日本取締役協会著、2004年東洋経済新報社、109ページから110ページより引用、なお下線部は提案者による)
英国財務報告評議会(FRC)改定統合規範(THE COMBINED CODE OF CORPORATE GOVERNANCE: JULY 2003)
取締役会は、独立性を有していると判断される非業務執行取締役と、年次報告書で特定しなければならない。取締役会は、その非業務執行取締役が、見解と資質において独立しているか否か、取締役会の意思決定に対し相当の影響を及ぼす関係または状況にあるか否かを決定しなければならない。また、取締役会の決定に影響を及ぼすかもしれない関係と状況(以下に定める例を含め)が存在するにもかかわらず、該当取締役が独立性を有すると判断するならば、取締役会はその理由を説明しなければならない。
・過去5年内において会社またはグループ会社の従業員だった者
・過去3年内において、会社と重要な取引関係があったこと(直接のほか、パートナー、株主、取締役、または会社と関係のある法人格の上級従業員としても含む)
・取締役としての報酬、会社のストックオプションまたは業績連動型報酬計画の参加者、会社の年金制度の一員としての支払いのほかに、会社から何らか別の報酬等を受け取っていた、または受け取っている場合
・会社のアドバイザー、取締役、上級従業員と強い親族関係がある場合
・役員の相互持合い、他の会社または法人格も含めて顕著な相互関係がある場合
・主要株主の代表
・取締役新任時から9年以上経過している場合

2011年6月20日月曜日

ゆかしメディアの記事

ゆかしメディアさんに取り上げていただきました。小生のコメントだけ、以下に引用しておきます。

「創業一族の乱」株主提案がなぜ必要か?」(2011年6月20日)

「世代間の不平等をあらためて、30、40代からリーダーを出すこと」と話す。

「日本は株主の権利を強く規定されている割には、株主提案では諸外国と比べて遅れています。株主が取締役会と直接対話できる機会は他にはなく、株主提案をもっと有効に使うべきです」

「日本社会は世代間で、特に30、40代に不平等感が強く、不当に抑圧されているこの世代からリーダーを出したいと思っています。年配者を排除するという意味では決してありません」

「どんなにすごいメジャーリーガーでも、ある年齢からパッタリと打てなくなることがあります。それと同じことだと思います。実際に、米国では30、40代の社長が活躍しています。そのくらいの年齢が経験や気力、体力が最も充実する頃で、(高齢になるほど)世の中の変化に対処できなくなってくるのだから当然です」

「能力のある人が後を継ぐのなら何の問題もありません。しかし、世襲の理由を明確に開示している企業はありません」

「80年代に政治がもっと先のことを考えて対策を講じていれば、今の日本はもっと違っていたでしょう。その時がいいからということではなく、予防という観点から、ダウンサイジングリスクを考えていかなければならないのです。もう、何もかも悪くなって、お金がなくなってからは何もしようがありませんからね」
 
「選挙でもそうですが、株主提案でも、やはり経営陣には声は届くものです」