2008年6月20日金曜日

山内溥氏(任天堂相談役)を、もっと評価しよう

山内溥氏(任天堂相談役)は、20代前半の若さで花札やカードゲームの製造を行う任天堂(http://www.nintendo.co.jp/)の経営者になり、50年近く経営に携わっていた戦後日本を代表する経営者ですが、日本においては、山内氏に対する正当な評価があるとは到底いえないと思います。

冷静に考えると、「ファミリーコンピュータ」を開発・発売して、新しい娯楽産業をつくりあげた、その新規性は、おそらく山内氏がなくてはありえなかったのではないでしょうか。そして、「ゲームボーイ」という携帯型のゲーム機は、世界でもっとも売れた製品となりました。

アップル・コンピュータ(http://www.apple.com/)の創業者であるスティーブ・ジョーブズ氏は、パーソナルコンピュータという概念を発明した天才だとされて、評価されています。ソニー(http://www.sony.co.jp/)の創業者の一人、故盛田昭夫氏はコンスーマー・エレクトロニクスと言う概念を生み出したと高く評価されています。山内氏の役割は、ジョーブズ氏や盛田氏のそれと比べて、決して見劣りしないものです。

そして最後の貢献は、岩田聡氏を後継の経営者にしたことです。2006年に発売された「Wii」がどれだけ成功し、ゲーム市場のあり方そのものを変えたかをみれば、明らかです。岩田氏にしても、仮に本人が優れた能力を持った開発者、経営者としての潜在能力をもっていたとしても、山内氏が岩田氏の潜在能力を見抜いて社長に抜擢したからこそ、このようなゲーム市場の根本的な変化がありえたのです。

残念ながら、日本社会は、優れた日本人を正しく評価できない傾向にあるようです。

2008年6月14日土曜日

東大の改革の行方をよく見守ろう(1)

私は一応、東京大学の出身者です。大学ではいろいろな方にお世話になりました。海外に出て、世界中からきた学生と大学院で切磋琢磨したり、仕事をして競争したりすると、日本の大学は、大学教育を通じて、国際的に競争しているんだと感じるところがあります。

例えば、インドの名門校インド工科大学(India Institute of Technology)は、インドにある7つの科学・工学系の大学の集合体(日本の戦前旧帝大のようなものです)ですが、学部卒業生の学力のレベルが、大体MITやスタンフォード大学の修士卒業生のレベルであり、ここからコンピューター・サイエンスを筆頭としたアメリカの工学大学院にフェローシップ付きで入学して、著名なサイエンチストになっていく競争力のある学生を多数生み出していることが、インドの工学における世界的な地位をあげているといってもよいと思います。30万人のうち、5000人程度しか入試に通らないのです。(このような競争力のある大学は、例えばイランのSharif University of Technologyもその一例です)。

インド工科大学の記事
http://en.wikipedia.org/wiki/Indian_Institutes_of_Technology

Sharif University of technologyのホームページ
http://www.sharif.ir/en/
http://en.wikipedia.org/wiki/Sharif_University_of_Technology

はたして何人の東大教官が、自分たちはインド工科大学やイランのトップの大学と競争しているという意識を持っているのでしょうか。たとえば私が以前に見たコンピューター・サイエンスの分野での引用数では、トップ1000に入っている日本人の研究者はたった一人だったと記憶しています。

私は経済学やコンピュータ・サイエンスなどの分野での学部教育のレベルについて、コメントできる実経験を持っていますが、東大といえども、MITやスタンフォードのみならず、インドや途上国でのトップ大学との比較でも、レベルが少し低すぎるように感じています。

さてわが出身大学ですが、授業料600万円のリーダー養成講座をはじめるという記事。
http://www.j-cast.com/tv/2008/06/12021669.html

日本の大学は、東大をお手本として動いていくことは否定しきれないわけですから、東大の行方には日本の大学教育の将来がかかっていくといっても過言ではありません。私の外部から見た印象では、小宮山宏総長になってから、大分正しい改革の方向性へ舵が切られたように見えます。大学の独立行政法人化により、変わらざるをえないということなのかもしれませんが。

ハーバード大学やエール大学などでも、短期の講座で大学が収入をあげるということは普通に行われています。国際的に競争力のある大学としては、収入もあげなくてはならないのですから、方向性は正しいのでしょう。

東京大学のページ
http://www.u-tokyo.ac.jp

ハーバード大学のページ
http://www.harvard.edu

エール大学のページ
http://www.yale.edu

2008年6月8日日曜日

『超・格差社会アメリカの真実』(小林由美著)は、まれに見る名著である

最近になって、以下の本を手に取りました。

以前に私が毎週視聴しているビデオニュース・ドットコムに出演されていたので、それで小林氏のことは知っていたし、一定の評価はしていたのですが、それだけではこの本のよさを見抜けませんでした。http://www.videonews.com/on-demand/311320/001046.php

『超・格差社会アメリカの真実』(日経BP社 2006年出版) 小林 由美 (著)http://www.amazon.co.jp/gp/product/482224542X/ref=sib_rdr_dp

小林由美氏は、1975年東京大学経済学部卒、スタンフォード大学MBAであり、東大時代は小宮龍太郎氏の(日本における近代経済学の草分けの人物の一人)ゼミであり、当然学生時代から聡明であったと予想されるが、実際のところ、啓蒙書としてこの水準を達成している本は、なかなかない。

すでに日本でも多くの書評が書かれているようだが、小林氏はいわいる民間のエコノミスト・コンサルタントであり、歴史学を専門にしているわけでもないにも関わらず、例えばアメリカの歴史において、南北戦争が奴隷制度の廃止を理念に掲げていたとはいうものの、基本的には北部と南部の利権争いから発生したものであり、戦後に南部から北部へ大きな富が移転したことなど、近年の経済史、歴史学の研究成果を、さらりと指摘しているなど、小林氏の知的教養や分析力の深さを垣間見ることができる。

特権階級とされる資産10億ドル以上の超富裕層の影響力は、アメリカ社会では計り知れないが、彼らがエリートとして外交や慈善活動を行っていることも事実。あるいは公教育の荒廃や、シンクタンクやプライベート・エクイティー・ファンドなどの、プライベートクラブについても、おおまか客観的で正しいと言える言及がある。

2008年6月4日水曜日

ブロンクス動物園(Bronx Zoo)訪問記

先日の日曜日に、ニューヨーク近郊の動物園であるブロンクス・ズー(Bronx Zoo)へ行って来ました。

http://www.bronxzoo.com

365日オープンというふれこみではあるが、夏の季節になると、さすがに日曜は人が多い。いくつかのアトラクションでの行列の待ち時間が嫌な場合は、平日に行くしかないと思える。立地はBronxというあまり治安が宜しくないところにあるが、実はマンハッタンからも、2の電車に乗って、1本だったりする。

いくつかの見所があったが、あえてここでは書かないことにする。