2008年6月8日日曜日

『超・格差社会アメリカの真実』(小林由美著)は、まれに見る名著である

最近になって、以下の本を手に取りました。

以前に私が毎週視聴しているビデオニュース・ドットコムに出演されていたので、それで小林氏のことは知っていたし、一定の評価はしていたのですが、それだけではこの本のよさを見抜けませんでした。http://www.videonews.com/on-demand/311320/001046.php

『超・格差社会アメリカの真実』(日経BP社 2006年出版) 小林 由美 (著)http://www.amazon.co.jp/gp/product/482224542X/ref=sib_rdr_dp

小林由美氏は、1975年東京大学経済学部卒、スタンフォード大学MBAであり、東大時代は小宮龍太郎氏の(日本における近代経済学の草分けの人物の一人)ゼミであり、当然学生時代から聡明であったと予想されるが、実際のところ、啓蒙書としてこの水準を達成している本は、なかなかない。

すでに日本でも多くの書評が書かれているようだが、小林氏はいわいる民間のエコノミスト・コンサルタントであり、歴史学を専門にしているわけでもないにも関わらず、例えばアメリカの歴史において、南北戦争が奴隷制度の廃止を理念に掲げていたとはいうものの、基本的には北部と南部の利権争いから発生したものであり、戦後に南部から北部へ大きな富が移転したことなど、近年の経済史、歴史学の研究成果を、さらりと指摘しているなど、小林氏の知的教養や分析力の深さを垣間見ることができる。

特権階級とされる資産10億ドル以上の超富裕層の影響力は、アメリカ社会では計り知れないが、彼らがエリートとして外交や慈善活動を行っていることも事実。あるいは公教育の荒廃や、シンクタンクやプライベート・エクイティー・ファンドなどの、プライベートクラブについても、おおまか客観的で正しいと言える言及がある。

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