2008年11月14日金曜日

アメリカ大統領選について思う(7):インターネット選挙運動の存在しない日本を悲しく思う

今回のアメリカ大統領選において、バラック・オバマ(Barack Omaba)候補はインターネットを極めて有効に使ったといわれていますし、様々な観察事実から、私もそのようにいえます。

例えば献金についてですが、オバマ候補は集金力に優れていましたが、それはインターネットの窓口から小口の献金を集めた積み重ねだとされています。これは相対的に大口の献金者が多かったヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)候補と対照されます。20代や30代の学生や社会人が、クレジットカードで3000円とか4000円とかいう金額をオバマ候補に寄付した結果、史上最大の献金が集まっているのです。これは驚くべきことです。

一般に民主主義下においても、例えば農業や防衛産業などの利害集団が人口比と比較しても強い力を持っているのは、利益集団の利害が集団内でより均一であるために、「ただ乗り(フリー・ライダー)問題」を回避しやすく、集団としてのロビー活動をしやすいからだと言われています。また投票行動自体が均一的であるという点も、指摘されます。
その結果として、利益集団としての単一の行動を取りにくいサイレント・マジョリティー(静かな多数派)よりも、政治的な力や利権誘導力をもつとされます。

サイレント・マジョリティーである大衆(例えば、日本における都市の中所得層や若年層)は、頭数が多くても、政治的に束になってかかってこないので、政治家からは甘く見られているのです。
ところが、今回の大統領選挙(民主党の予備選を含む)では、インターネットがサイレント・マジョリティーの政治参加に重大な変化を起こしたのです。

まず投票行動では、明らかに投票率があがっており、これは通常選挙に行かないか、そもそも選挙人登録すらしていない若年層が、選挙に行って、オバマ候補に投票したということが、大きいと言われています。またMeetup.comというソーシャル・ネットワーキング企業のサービスを利用した、見ず知らずの人が集会を行う方法も多用されていました。

ちなみにこういったインターネット選挙運動の先駆となったのは、2004年大統領選のハワード・ディーン(Howard Dean)候補(当時前バーモント州知事:民主党)の選挙活動でした。今回のオバマ候補は、そういった過去の経験を極めて有効に使ったのです。 私は、実際に使うことのできる資源を利用して、こういった戦略を立てられて、実際に選挙戦を有利に進めることのできた点にも、オバマ次期大統領の能力の一端を垣間見るのです。

日本でも宗教団体や、一部の利益集団(医師会、全国特定郵便局長会議、農協、労働組合など)が、どの政党や候補を支援するかが重要でした。しかしそういった集団の力は相対的には弱まっています。しかし例えば都市の若年層の集団が、政治において有効に力を行使し、政治を変えたというようには、いまだなっていません。

これは総務省がインターネット選挙運動を禁止していることとも大きく関係しているのです。日本では、インターネット・サイトの更新が、第142条第1項で禁止されている「文書図画の頒布」にあたると解釈されているされているから(ウィキペディア関連記事参考)なのですが、そもそもこの条項は、戦後に共産党が人海戦略で選挙活動をやることに対抗するためのものだったわけですが、いま既得権保持のために使われているわけです。私はこれを、なんとも悲しいことだと考えるわけです。

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