2011年6月4日土曜日

議員立法機能の上昇が国難克服のカギ

自分自身がヘッジファンドの投資手法を開発しながら、東京地裁民事8部で本人訴訟をやったり、仮処分申請を行ったりする、おそらく比較的希少性の高いであろう様々な体験からつくづく思うのですが、日本の政治経済システムの最大の問題の一つは、立法機能を実質的に霞が関の官僚が独占していることだと思います。

すでに述べたように、法治国家たる日本では、法律の最終的な解釈権は裁判所が持っています。地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所の順に上位に位置づけられますし、私の提起している株主総会決議取消訴訟の最初の担当判事だった福井章代裁判官がなっていた最高裁判所の調査官というポジションは、裁判官のキャリアの中ではエリートコースとされる分野です。彼らは法律の解釈者ですので、「会社が適法な株主提案の議題を株主総会で取り上げなくても、会社が提案した議題・議案の取消事由にはしない」という判決を、いわば解釈で行っているわけです。しかしながら、国会で「会社が適法な株主提案の議題を取り上げなかった場合は、当該株主総会でのすべての決議を取消しとする」という条文を、会社法改正案として衆議院と参議院で可決し、国会で成立させれば、裁判官は従わざるを得ないわけです。従って、私の思い描くような資本市場を作るためには、立法活動は極めて重要なのです。

あまりよく知られていないかもしれませんが、衆議院と参議院にはそれぞれ衆議院法制局参議院法制局があります。国会議員が議員立法をするときには、これら事務局が、他の法律との関係などを含めて対応することになっています。原則立法の事務局ですから、人事という意味では、比較的霞が関からも独立しています。ただし、司法修習の期間に修習生が交流することはあるみたいです。

ところが実際のところ、日本では政府提出の法案がほとんどであり、その作成は霞が関の官僚諸氏が行うわけです。すると霞が関の官僚の行動原理は、基本的には自らの省庁の天下り先の確保ですから、そこのところで徹底的に骨抜きをされるわけです。法務省の法制審議会も同じような機能です。法務省民事局のキャリア官僚(過去に太田洋氏や泰田啓太氏なども所属)などは、東京地裁民事8部の若手裁判官と同じように、企業法務を行う弁護士事務所へのパートナー弁護士としての転身を狙っていたりしますので、少なくとも大多数の国民の利益とは別個の方に目が向いているわけで、それに比べれば、選挙で落とされることにおびえている衆議院議員に権限を与えることは、必要ですばらしいことなんですね。

ただし、国会議員に力を与えるにしても、小沢一郎氏が従来から言っていた国会議員が内閣に100人単位で入るという政治主導の絵は、結局のところ、内閣法や国会法の改正がないので、一切実現していません。政務三役に入れなかった大半の議員の不満がうっ積し、彼らの存在意義が失われるという結果になっただけです。あと二院制の下では、いくら政府や政務三役が決めても、連立内閣や衆参のねじれがある状況だと、複数の党の幹部が一致しないと実際は何も法律が国会を通過して実際の法律にならないという現実もあります。政務三役よりも幹事長室に最終的な権限が集中していたのが、鳩山首相・小沢幹事長時代の民主党政権でしたし、「議員立法の禁止」という党の方針もありました。

以上を踏まえると、おそらく改革にとって肝心要のところは、「霞が関の官僚でない主体が立法を行える仕組み」だと思います。都市部の多くの有権者の支持を受けているみんなの党も、シンクタンクを設立する公約を掲げていましたが、いまだに当該議員立法を提出するには至っていませんし、日本では国会議員に立法機能がほとんどないことが問題としてあります。

私は一つの補完的な案として、地方議会の議員が国会の立法機能をサポートすることの兼職を広範に認めて予算をつけ、そして立法能力で頭角を現した地方議員には、国会議員への道が開かれるというようなシステムが良いのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

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