私は海外から日本を眺めるという立場に長らくいましたが、日本に必要なのは庶民版アクティビスト・ファンドだと確信しています。
高度成長期、あるいは少なくとも80年代までの日本経済は、右肩上がりの成長を続けていました。したがって、さして能力がなくとも、会社は経済全体の上昇率程度には、成長できていたので、現在の日本の上場企業の経営者の多くは、株主にとっての価値を増やす経営を行う能力や自覚に乏しく、潜在的に上手に経営すれば価値を大きく増やせる会社でも、そのような経営者が経営すると、大きく伸びるということはなくなってしまいます。したがって今でさえ、現金や不動産を多数保有しているにもかかわらず、株価が低く放置されている会社が多くあるのです。
スティール・パートナーズやチルドレンズ・インベストメント(TCI)といった投資ファンドは、このような環境下で低く放置されている会社の株を買い、経営陣に圧力をかけることで、保有株式の価値の増加を狙います。このような投資戦略に、世界からお金が集まるのは、日本の資本市場に、以上のような条件を満たす投資先が多数あるからなのです。
しかしながら、日本の社会の世論としては、このようなファンドに対して嫌悪感のようなものが形成されています。海外の金持ちがわけの分からん運用で日本の企業を責めているというような印象なのでしょう。その上、経済の理屈が分かっていない裁判官が、ブルドックソースのときみたいに、国際的に見て大変違和感のある判決を出す。これは日本社会にとって、大変不幸なことです。
日本の金融資産の多数は、日本企業の株式で運用されています。したがって、日本企業の業績がこのように低迷していると、年金資金が不足するなど、長期的な国民益という意味で、多大な損害が発生します。企業業績を改善し、日本企業の株価を上げるには、無能な経営者の更迭する必要があり、そのためには、アクティビストが活躍する必要があるのです。
海外の金持ちのお金である外国籍のファンドが、日本企業を責めているというのではなく、サラリーマン所帯のお金の集合体からなる投資資金を運用する担当者が、非効率な経営をしている会社の株主になり、議決権行使などで会社と無能な経営陣を変えていく。これならば、日本社会の世論も、アクティビストを受け入れるのではないでしょうか。
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