2009年1月28日水曜日

高橋洋一氏(元財務官僚:東洋大学教授)が、再びビデオニュースに登場:今回だけは皆さんにみていただきたく、高橋氏の議論は卓越しています。

今回の高橋洋一氏東京大学理学部数学科出身の元財務官僚)の番組は、面白すぎます。それにしても日本の主要メディアが取り上げないのが痛い。起こっていること(官僚の既得権を守るために、既に発効している法律を実質的に書き換えるような政令を閣議決定)も、法治国家の体をなさなくなっており、衝撃的です。高橋洋一氏については、私も能力を過小評価していました。 以下、高橋氏の、霞ヶ関改革に関する主張と説明をまとめておきます。 ちなみ以下で指摘されている、今の事務(官僚)方のトップの官房副長官は、警察官僚出身(元警察庁長官)の漆間巌(うるま いわお)氏であります。

高橋氏の説明によれば、大手メディアがまともに報じていない間に、国会で成立した法律の本則に反する行為を、法律よりも下位にある政令で可能にしてしまうというとんでもない事態(官僚による明らかな法律違反:「霞ヶ関のクーデター」(仙谷由人衆議院議員))が起こっており、麻生太郎首相も、何が問題かをまともに認識していないようである。いったいスタンフォード大学LSEで何を勉強していたのかということでもある。結論から言えば、政令で法律をひっくり返せるのならば、法律を立法府である国会で議論する事自体が意味がなくなり、国会議員はいらなくなる。

国家公務員法の改正(安倍政権下)で、省庁による官僚の再就職の斡旋(天下り)が実質的に禁止されたが、総理大臣が「委任する」再就職等監視委員会(新設)が承認した場合に限り、3年間だけは経過措置として、天下りが認められることになっていた。ねじれ国会でこの再就職等監視委員会の人事が進まないため、麻生政権はその間首相に天下りを承認する権限を与える政令を作った。高橋氏によれば、このことは、日銀総裁がいないから、総理大臣が政令で、「自分が日銀総裁を兼務する」といっているのと同じことである。明らかな法律違反なので、事務的な役人は困っているはずであるが、これを上層部が押し切ろうとしている。これら行為には、内閣官房の事務方(内閣官房副長官)には責任があり、民主党政権になれば退職金無しで懲戒免職にすればいいし、斡旋をした時点で、行政訴訟を起こせばかなりの確率で政治側が敗訴すると、高橋氏はいう。少なくとも今までは形式的にも大丈夫な範囲でやっていたわけで、これだけ危ないことを官僚がしているのは、あまりにもレベルが低い。官僚OBに対する、「渡りの斡旋」は、一民間人に対する利益供与なので、公序良俗に反しているし、違法である。法律というのは、ある意味では平等にできている。それを政令に書いてしまったわけ。追い詰められた状況で、官房副長官(霞が関官僚のトップ)が非合理的な判断をしたとしかいえない。事務次官会議も通過している意思決定なので、官僚全体の総意とみなされているはずであるという。

なお、官僚のOB会(民間人)が互助会を作っており、「渡り」を斡旋しているという形式を取り、官僚はそれにはタッチしていないという理屈を取れば、少なくともこんな形式にはなっていなかったはずで、法律違反なので、民主党政権になったら、今の事務次官を全員懲戒処分にすれば良いと、宮台真司氏は主張した。

また管直人氏(民主党)の計画では、近未来の民主党政権下では、大臣の記者会見を官僚の作文読み(しかも従来はこの作文に拘束される)にしないで、会見までにかなり時間をかける合宿をするという。そこで官僚に刷り込まれないように、シンクタンク的な役割を果たす人材をプールするべきである。 だが、大学(アカデミズム)、NGO(NPO)、、シンクタンク、市民活動家、政治家などが、法律的なリテラシーを持っていればよいのだが、日本ではまだそういった人材の蓄積が弱く、霞ヶ関がほぼ独占している。霞が関では、どうやって法律を作るかは重要であるが、これは簡単なようで難しい。「委任する(しなくてはいけない)」と「委任できる(しなくてもいい)」では利権の所在が、まったく変わってしまうというところで、官僚は動いている。これが民間の人材が、霞が関で活躍する時の障害になるという。「てにおは」や政令で霞が関は、利権を守ることができるという。例えば、記者会見を複数会行い、霞が関官僚の作文を読むと、実質言質を取られる形になり、大臣は彼らに誘導されていくという。例えば廃止と統廃合(霞が関用語的には、廃止はしないで統合すれば良いということ)は違うという。したがって、大臣は自分の言葉で話すべきであるという。

秘書官にどういう人を持ってくるかが、政治家の能力。オバマ大統領にしても、すべての事柄を自分で分かっているわけではなく、誰をスタッフに持っていくかという勝負を、基本的にはやっているわけで、優秀な人を連れてこれるかどうかで、それぞれの政治家の能力がわかればいいということである。高橋氏によれば、大臣1人に3人の秘書官で、実効性がある形で、官僚をコントロールすることも可能だという。

マル激トーク・オン・ディマンド 第407回(2009年01月24日)
無法地帯化する霞ヶ関
ゲスト:高橋洋一氏(東洋大学教授)
http://www.videonews.com/on-demand/0401410/000827.php

(以下、引用)
 霞が関の官僚たちは一体何を考えているのだろう。  
 先々週の国会では、麻生首相は、既に発効している法律を実質的に書き換えるような政令を閣議決定したことを野党から厳しく追及され、答えに詰まる場面が、繰り返しテレビで放送された。安部政権下での国家公務員法の改正で、省庁による官僚の再就職の斡旋、すなわち天下りが実質的に禁止され、経過措置として3年間は新設される再就職等監視委員会が承認した場合に限り、天下りが認められることになっていた。しかし、ねじれ国会でこの再就職等監視委員会の人事が進まないのをいいことに、麻生政権はその間首相に天下りを承認する権限を与える政令を作ってしまった。国会で成立した法律の本則に反する行為を、法律よりも下位にある政令で可能にしてしまうというのだ。これは明らかに法律違反であり、「霞ヶ関のクーデター」(仙谷由人衆議院議員)と批判されてもしかたがないほどの暴挙だった。  安倍政権で公務員制度改革を設計した東洋大学の高橋洋一教授は、これを官僚による露骨な天下り禁止法案の切り崩しと説明する。何とか天下りを続けたい官僚たちが、なりふり構わぬ既得権益の防衛に乗り出した結果だというのだ。  
 しかし、官僚の権謀術数を知り尽くしている高橋氏は、「このような露骨なやり方は考えられない」と、官僚が利権維持のために法律違反まで犯すようになったことを嘆く。同じく安倍内閣で行政改革担当大臣として公務員制度改革を断行した渡辺喜美衆議院議員も、この政令の撤回を麻生首相に求めたが受け入れられなかったために、自民党を離党している。
 しかもこの政令には、一旦天下りした公務員OBの再就職を斡旋する、いわゆる「渡り」を容認する条項まで盛り込まれており、官僚たちは麻生政権が迷走を続ける間に、天下りを禁じた改正国家公務員法を完全に骨抜きにするばかりか、どさくさに紛れて、これまで法律で認められていなかった行為までも政令に押し込んでしまったようだ。
 それにしても、なぜ官僚はここまで露骨に権益擁護に乗り出さなければならないのか。これまでも官僚は、官僚にしかわからないような独特な霞ヶ関用語を法案の条文や大臣談話に滑り込ませることで、政治家の決定を骨抜きにするなどして、政治を巧みにコントロールしてきた。しかし、今回の政令のような露骨な手法は、これまで例をみない。
 また、仮に民主党が政権の座についても、霞ヶ関をコントロールできなければ、有効な施策を打つことはできない。若い議員が多く、官僚の手練手管を熟知していない民主党に、官僚支配を打ち破ることができるのか。高橋氏は民主党が政権についた時、今回の政令作成に関わった官僚たちを厳しく処分できるかどうかが、最初の試金石になるとの考えを示す。
 官僚たちは単に公共心を失ってしまったのか。あるいは、世論の突き上げで少しずつ特権を失い、いよいよここまでやらなければ、自分たちの権益を守れなくなってきているということなのか。今、霞ヶ関で何が起きているのかを、官僚の世界を裏の裏まで知り尽くした高橋氏に聞いた。
(途中、渡辺喜美衆議院議員の電話出演あり)

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